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日本の製造業はIoT活用で強い現場を生かせるか、危うい「一人インダストリー4.0」モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

「インダストリー4.0は生産現場だけの話ではない。設計から生産に至るまで連携を図っていく必要がある――」。東洋ビジネスエンジニアリングの年次イベント「mcframe Day 2017」のオープニングトークライブでは、製造業のIoT活用において、生産現場に活動が偏りがちな日本の現状を指摘する声が相次いだ。

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 「インダストリー4.0は生産現場だけの話ではない。設計から生産に至るまで連携を図っていく必要がある――」。東洋ビジネスエンジニアリングの年次イベント「mcframe Day 2017」(2017年2月16日)の基調講演に当たるオープニングトークライブでは、ドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアルインターネットに代表される製造業のIoT(モノのインターネット)活用において、生産現場に活動が偏りがちな日本の現状を指摘する声が相次いだ。

 オープニングトークライブのテーマは「なにが我が国製造業の活力となり得るか」。産業界からデンソーアイティーラボラトリ社長の平林裕司氏、官公庁から経済産業省 クリエイティブ産業課長の西垣淳子氏、大学から慶応義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 准教授の白坂成功氏に加えて、イベントホストとして東洋ビジネスエンジニアリング 常務取締役 CMO/CTO 新製品開発本部長の羽田雅一氏が参加し、モデレーターはウフル 上級執行役員 IoTイノベーションセンター所長の八子知礼氏が務めた。

「mcframe Day 2017」オープニングトークライブの様子
「mcframe Day 2017」オープニングトークライブの様子。左から、ウフルの八子知礼氏、デンソーアイティーラボラトリの平林裕司氏、経済産業省の西垣淳子氏、慶応義塾大学大学院の白坂成功氏、東洋ビジネスエンジニアリングの羽田雅一氏

日本の技術者は言われたことはしっかりやるが、言われてないことはやらない

デンソーアイティーラボラトリの平林裕司氏
デンソーアイティーラボラトリの平林裕司氏

 まず議論になったのが「日本の製造業を取り巻く環境」である。現状認識として、「日本の製造業の現場におけるカイゼンが高いレベルにある」というのが参加者全員の一致した意見だった。平林氏が「デンソーにはモノづくりを知り尽くした人々がいる。設計から製造に向けてカイゼンを繰り返す文化が根付いている」と語る通り、生産現場は日本の製造業の強みといえるだろう。羽田氏も「IoTを低コストで活用できる環境が整し、今まで諦めていたことができるようになった。従来技術+新技術で今までにないことができる」と述べる。

慶応義塾大学大学院の白坂成功氏
慶応義塾大学大学院の白坂成功氏

 ただし日本の製造業にとって有利な材料ばかりではない。三菱電機で宇宙機の開発に携わっていた白坂氏は「NASAやエアバスなど欧米の技術者と比べて、日本の技術者は言われたことはしっかりやる点で優れている。でも、言われてないことはやらない。これは弱みにならないか」と指摘。また「IoTの活用では、物事を抽象化して考えるシステム的な考え方が必要になる。そのためにはシステム的な考え方をするための教育が必要だ。このことは、欧米は得意で日本は苦手とよく言われるが、インダストリー4.0を提唱したドイツもここ3年で教育を始めたばかり。日本人が苦手と言われているのは、単にやってなかったり、教えられていなかったりというだけかもしれない」(白坂氏)と述べた。

 西垣氏は「確かに日本の生産現場はすごい。IoT活用も積極的に取り組んでいる。でも私はこれを『一人インダストリー4.0』と呼んでいる。生産現場で実践しているけど、その一人がつながっているだけ。本来のインダストリー4.0は、システム発想を現場に落とし込むことであり、設計から生産、そして他の企業まで“つながる”ことに意味がある」と強調する。

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