なりふり構わぬ東芝、メモリ事業会社は完全売却へ:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
経営危機の東芝は、2016年度第3四半期の業績見通しと、大幅な減損で債務超過の原因となっている原子力事業の対応策について発表。生き残り策として「20%未満」としてきたメモリ事業会社の株式売却を「マジョリティーにこだわらない」とし、100%売却もあり得るという方向性を示した。
20%未満のはずが完全売却へ
東芝では2017年1月27日に、債務超過に対する資本増強のため、メモリ事業を分社化することを発表。この時は経営権は手放さず、株式売却についても全株式の20%未満を基準として外部資本を受け入れることを条件としていた※)。
※)関連記事:選択肢がなかった東芝、虎の子のメモリ事業を分社化し株式20%売却へ
しかし今回、この条件を撤廃する方針を明らかにしている。綱川氏は「メモリ事業の外部資本については多くのオファーをもらっている。一番評価いただいている選択肢を柔軟に考えていきたい。マジョリティー(過半数の株式)をキープすることはこだわらないように方針を変えた」と述べている。さらに報道陣による「100%売却することもあり得るのか」との問いに対し「全ての可能性があり得る」と回答。虎の子のメモリ事業を完全に手放す可能性があることをにおわせた。
東芝では中期経営計画として、メモリを中心とするストレージ事業、エレベーターなどインフラを担う社会インフラ事業、原子力発電所などのエネルギー事業を3つの注力領域とし、これらの基盤として事業運営を支援するインダストリアルICTソリューション社とともに、主に4事業体での運営を進めていく方針を示している。今回債務超過に陥りそうな状況であるが綱川氏は「基本的な方針は変更しない」と述べている。
しかし、原発を除くエネルギー事業や社会インフラ事業、ICT関連事業は現状では大きく伸ばせる事業体ではなく、市場価値は低い。実際に資本対策として「メモリ事業以外の売却は考えていない」(綱川氏)としている。また、原発事業については「海外の原発事業についてはパートナーを募り、持分法比率を下げたい」(綱川氏)という方針を示しているが、こちらは財務状況が不透明過ぎて買い手がつかない状況である。
結局のところ、メモリ事業を切り売りするしか債務超過を切り抜ける選択肢がないというのが東芝の現状である。綱川氏は「オファーはいろいろあっていえない」としているが、「全株式の20%未満」とした条件を撤廃したのも、経営権を握れない条件を嫌がった、入札参加企業の意向によるものである。足元を見られた売却になる可能性も否めない。
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