原子力発電所をめぐる日米欧企業連合 vs. 韓国連合の戦い:知財コンサルタントが教える業界事情(3)(1/2 ページ)
脱石油エネルギーの1つとして注目を集める原子力発電。国を挙げての競争が激化する業界を知財マップで見てみると……
巨大なインフラ投資が予想される原子力発電
皆さん、こんにちは。日本技術貿易の野崎です。知財コンサルタントが教える業界事情シリーズの第3回は、今後10〜20年間に全世界にわたり巨額な投資が見込まれている原子力発電にフォーカスを当てたいと思います。
米国・スリーマイル島原子力発電所や旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所における事故もあり、主要国をはじめとしてしばらくの間、原子力発電所建設を見送り・凍結していました。しかし近年、各国ともエネルギー安定供給や地球温暖化対策のために原子力発電を見直しています。アメリカも30年ぶりに原発新設を決定、「脱原発」を掲げていたドイツでも政策を転換し、2020年までに国内の原子力発電所を全廃する予定でしたが、12年間延長することを決定しました。
一方、全世界の成長エンジンである中国やインドなどを筆頭に東南アジアや中東・アフリカといった地域で、増加する電力需要に対応するために原子力の設備容量増強が計画され、全世界レベルでは今後15年間で約2.5倍まで拡大すると予想されています(図1参照)。
日本政府もこの絶好の機会を逃すまいと、原子力発電や鉄道・水道などのインフラ分野の民間企業の取り組みを支援し、国家横断的かつ政治主導で機動的な判断を行うため、パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会を開催し、民間企業を支援しています(下記URL参照)。
原子力発電ビジネスではプレーヤーは図2に示したようにほぼ固まっています。
記憶に残っている方もいるかと思いますが、2006年に東芝は米ウェスチングハウスを約6200億円で買収することを発表しました。これにより原子力発電ビジネスでは、東芝・ウェスチングハウス連合(東芝・WH連合)、日立・GE連合、三菱重工業・アレヴァ連合といったそれぞれの日米欧企業連合が形成されました(アレヴァはFramatomeが母体となり、2001年にシーメンスの原子力部門と事業統合し、2006年に現在の社名となっています)。
日米欧の先進国市場では東芝・WH連合、日立・GE連合、三菱重工業・アレヴァ連合によって市場を寡占化している状況ですが、図1に示した国・地域のうちインドや東南アジアではロシア勢や韓国勢が積極的に参入してきており、受注競争が激化しています。
今回は図2に示したプレーヤーのうち、ロシアのロスアトムを除いた企業および企業連合の動向について分析したいと思います。
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