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シャープ再建、ホンハイ傘下で行うことを正式発表製造マネジメントニュース

経営再建に向けて出資の受け入れ先で揺れていたシャープがついに決断を下した。鴻海(ホンハイ)精密工業の出資を受け入れ、経営再建を進めていくことを正式発表した。

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 シャープでは、2014年度(2015年3月期)に巨額の赤字を計上したことにより2015年度は経営再建に向けた取り組みを推進。資本金の取り崩しや人員削減など構造改革を進めてきた(関連記事:“血まみれ”で夢を描くシャープ、止血策は十分か?)。しかし、ディスプレイデバイス(液晶ディスプレイ)事業の再建、単独での再建を諦め、外部からの出資を受け入れる方針としていた。

 当初はディスプレイデバイス事業の構造改革を中心に議論が進み、同事業を分離して売却する方向で話が進んでいた。しかし、交渉を進める中でシャープ本体への出資を受け入れる方向で話が進み、鴻海精密工業と産業革新機構の2社が浮上。2016年2月4日の決算会見で「1カ月以内に結論を出す」としており、どちらの傘下で再生に取り組むのか注目を集めていた(関連記事:揺れるシャープ再建、ホンハイか産業革新機構か、決め手は「液晶以外」)。

 シャープは、今回の鴻海精密工業の出資を正式に受け入れたことにより鴻海精密工業の関連会社として再建に取り組むことになる。正式には、鴻海精密工業精密の完全子会社であるFoxconn、Foxconn Technology、SIO Internationalを割当先とする新株式の第三者割当増資を行い、出資を受け入れる形だ。現状では、鴻海精密工業精密工業はシャープの企業体事業ごとに解体することはないとしており、シャープの現在の形を維持したまま再建へと踏み出す。

シャープが鴻海精密工業を選んだ6つの理由

 鴻海精密工業を選んだ理由についてシャープでは以下の6つの点を挙げている。

  1. 割り当て予定先による出資の総額は4890億円となり、ディスプレイデバイス事業の競争力を強化し、かつシャープが一体として成長していくための資金・資本の手当てが可能になるとともに、運転資金の増強など、財務体質の改善にも大きく貢献する内容であると判断したこと
  2. 割り当て予定先は、液晶事業においてはシャープと相互補完的な関係にあり、協業を通じた事業のさらなる競争力強化が見込まれるとともに、他の事業においても世界トップクラスのEMSとしての製造技術の活用により、生産性やコスト競争力のさらなる強化が期待できるなど事業面でのシナジー効果が大きいと考えられたこと
  3. 割り当て予定先からは、シャープのブランド、既存の従業員および広範囲にわたる商品ラインアップの価値や、事業を取り巻くエコシステムを維持する意義についての十分な理解が示され、とりわけ、割り当て増資実行後のシャープの経営につき「経営の独立性」「一体性の維持」「従業員の雇用維持」「ブランド価値の重要性」「技術の保持」について強いコミットメントを得られたこと
  4. かねてより液晶テレビ、携帯電話・スマートフォンなどのODMを通じた取引があったのに加え、大型液晶パネルを生産する堺ディスプレイプロダクトを共同で運営しており、共同運営パートナーとして信頼関係を構築していること
  5. 鴻海精密工業は金融機関が保有する株式の半数を総額1000億円で買い取ることを予定しており、第三者割当増資を合わせても既存株主の利益にも十分に配慮した条件になっていること
  6. 第三者割当増資の実行の確実性を高めるため、締結予定の株式引き受け契約において1000億円のデポジットを提供すること、および引き受け額を支払う義務を履行しなかった場合には、シャープが該当デポジットを没収することができることを合意予定であること

“黒子”がついに表舞台に

 鴻海精密工業は世界最大のEMS(電子機器受託生産サービス)企業である。現在も董事長(CEO)を務める郭台銘氏が1974年に24歳で創業し、約40年間で売上高15兆円以上という巨大企業となった。創業当時は樹脂射出成形を中心とした町工場だったが、1990年頃に米国コンパックからデスクトップPCの筐体製造と組み立てを請負い、EMS事業へと舵を切った。現在ではデスクトップPCやスマートフォン、デジタルカメラ、ゲーム機、ロボットなど多岐にわたる製品の製造を代行。特にアップルのiPhoneの製造を一手に引き受けていることなどが有名だ。

 製造能力だけを取れば、製造業としては世界最大規模だといえる鴻海精密工業だが、自社ブランドの最終製品を展開することは一種の悲願である。同社グループのFoxconnをブランドとしたテレビやスマートフォンなどを展示会に出展したり、限られた販路で試験的に販売したりしたことはあったが、本格展開には至らなかった。シャープの買収により「シャープ」ブランドやグローバルでの販路を得ることで、“黒子”としての役割に徹してきた鴻海精密工業がついに表舞台に出ることになることになる。

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