スズキの「マイルドハイブリッド」が進化、モーターでのクリープ走行が可能に:エコカー技術
スズキは軽自動車「ワゴンR」「ワゴンR スティングレー」をフルモデルチェンジして発売した。「軽自動車として初」(スズキ)となるヘッドアップディスプレイなど先進安全技術を採用したほか、マイルドハイブリッドシステムを改良してモーターでのクリープ走行が可能になるなど環境性能も向上した。
スズキは2017年2月1日、軽自動車「ワゴンR」「ワゴンR スティングレー」をフルモデルチェンジして発売した。
幅広い世代のライフスタイルや価値観に向けてデザインを大幅に刷新。「軽自動車として初」(スズキ)となるヘッドアップディスプレイ(HUD)など先進安全技術を採用したほか、マイルドハイブリッドシステムを改良してモーターでのクリープ走行が可能になるなど環境性能も向上した。
JC08モード燃費はマイルドハイブリッドシステム搭載モデルで33.4km/l。車両価格は107万円から。月間販売目標台数はワゴンRとワゴンR スティングレーの合計で1万6000台。
軽自動車初、スズキとしても初採用のHUD
ワゴンRでは「軽自動車で初」(スズキ)、スズキとしても初採用となるHUDをメーカーオプションとして搭載する。「少ない焦点移動で走行中に必要な情報を確認できることは軽自動車にも必要」(同社の説明員)と判断したためだ。
HUDはコンバイナーに速度やシフトポジション、ナビゲーションによる交差点の案内表示を投影する。自動ブレーキや車線逸脱警報など運転支援機能の作動状況も表示される。投影位置は上下に12段階調整可能で、表示面積は6インチ相当。HUDのサプライヤはパナソニックだ。ダッシュボードのデザインを損なわないため、HUDは格納できるようにしている。
衝突被害軽減システムは、単眼カメラとレーザーレーダーを組み合わせた「デュアルセンサーブレーキサポート」を搭載している。ステレオカメラを使った「デュアルカメラブレーキサポート」との機能差はオートハイビームの有無だ。単眼カメラとレーザーレーダーにセンサーを変更したことで、オートハイビームが実現した。オートハイビームは夜間の視界を確保しやすくなるため安全性向上に寄与する。
同社説明員によれば「機能的に優れた装備を選ぶことになるので、当面の新型車にはデュアルカメラブレーキサポートは採用しない」という。今後の衝突被害軽減システムの開発次第では、ステレオカメラではなく、単眼カメラとレーザーレーダーの組み合わせを続投する可能性もあるとしている。
マイルドハイブリッドが進化、モーターでクリープ走行できる
新型ワゴンRには、改良版の「マイルドハイブリッド」を搭載する。
これまでスズキは、軽自動車に「S-エネチャージ」、登録車の「ソリオ」に「マイルドハイブリッド」という名称を用いてきた。どちらもモーター機能付き発電機(ISG)とリチウムイオンバッテリーを組み合わせたもので、減速時のエネルギー回生やアイドリングストップ後の再始動をISGで行う。加速時はエンジンの駆動力に加えて、ISGが最長30秒間のモーターアシストも行う。
ソリオは、2015年8月の全面改良でマイルドハイブリッドを採用。この時に、S-エネチャージよりも最高出力が大きい2.3kWのISGを搭載した。バッテリー容量はエネチャージ、S-エネチャージとも共通の3Ahだった。
新型ワゴンRには、従来よりも容量の大きい10Ahのリチウムイオンバッテリーを搭載した。ISGは三菱電機、バッテリーセルは東芝、バッテリーパッケージはデンソーが従来通りに供給している。
ソリオと同じ出力2.3kWのISGと容量10Ahのリチウムイオンバッテリーを組み合わせることで、渋滞時の徐行運転や、アイドリングストップ後などの発進時に最長10秒間、ISGの駆動力を使ってクリープ走行ができるようになった。
JC08モード燃費はFF(前輪駆動)のマイルドハイブリッド搭載グレードで33.4km/l。先代モデルは2014年8月にS-エネチャージを搭載して32.4km/l、その後2015年8月の一部改良でモーターアシストする時間と頻度を増やすとともに、燃焼効率を高めるなど改善したR06A型エンジンを組み合わせ、33.0km/lまで向上していた。今回のフルモデルチェンジでは、クリープ走行とモーターのアシスト領域拡大により、燃費を稼いだ(従来モデルの燃費は発表時の数値。2016年5月に発表した燃費不正測定の影響は含まない)。
車両重量は、先代モデル比で20kgの軽量化を図っている。プラットフォームやサスペンションの軽量化、超高張力鋼板の使用率拡大を進めた。軽量化も燃費向上に貢献した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 燃費向上に貢献するCVTは、嫌われ者
CVT(無段変速機)の採用は、燃費向上に寄与するばかりではなく、コストダウンにも有効、だけど…。 - スズキのフルハイブリッドは、性能よりも小型軽量化とコスト低減が優先
スズキは、小型ハイトワゴンの「ソリオ」「ソリオ バンディット」に新開発のフルハイブリッドシステムを搭載して発売した。システムは小型軽量化とコスト低減を図った。ソリオの広い室内空間を犠牲にせず、車両重量の増加も抑えた。 - 新型「スイフト」の「デュアルセンサーブレーキ」、実はトリプルセンサー
スズキは、コンパクトカー「スイフト」を全面改良して発表した。先代モデルまでのスイフトらしさを残しながらデザインを刷新するとともに、プラットフォームや足回りなど車両全体で軽量化を図り、車両重量は先代モデルより120kg軽い840kgとした。 - トヨタが満を持して投入した「Toyota Safety Sense」は“普及”こそが使命
トヨタ自動車が2015年4月から導入を始めた新開発の運転支援システム「Toyota Safety Sense(TSS)」。安価で高機能なこともあり、市場から高い評価を受けている。そこで、TSSの開発を担当したトヨタ自動車 制御システム開発部 第2制御システム開発室長を務める山田幸則氏に、TSS開発の背景などについて聞いた。 - スズキのステレオカメラは「アイサイト」と0.2ポイント差、違いは“熟成度”
スズキのステレオカメラ方式の運転支援システム「デュアルカメラブレーキサポート」を搭載する「スペーシア」は、JNCAPの予防安全アセスメントの評価結果が45.8点だった。同じステレオカメラ方式の運転支援システムである富士重工業の「アイサイト」搭載車両は満点の46点。この0.2点の差は小さいようで大きい。