トヨタが満を持して投入した「Toyota Safety Sense」は“普及”こそが使命:安全システム Toyota Safety Sense 開発担当者 インタビュー(1/4 ページ)
トヨタ自動車が2015年4月から導入を始めた新開発の運転支援システム「Toyota Safety Sense(TSS)」。安価で高機能なこともあり、市場から高い評価を受けている。そこで、TSSの開発を担当したトヨタ自動車 制御システム開発部 第2制御システム開発室長を務める山田幸則氏に、TSS開発の背景などについて聞いた。
トヨタ自動車が、新開発の運転支援システム「Toyota Safety Sense(TSS)」の導入を2015年4月に始めてから半年以上が経過した。TSSには、主に小型車向けの「Toyota Safety Sense C(TSSC)」と、中型〜大型車向けの「Toyota Safety Sense P(TSSP)」がある。
レーザーレーダーと単眼カメラを用いるTSSCは、大幅改良を加えた「カローラ」を皮切りに、その後「オーリス」「シエンタ」「ヴィッツ」「アベンシス」に採用された。2015年11月4日には、国内最量販車である「アクア」への標準搭載を発表している(「Sグレード」「Lグレード」を除く)。
一方、ミリ波レーダーと単眼カメラを用いるTSSPの導入は、2015年8月発売の「ランドクルーザー」からになる。同年10月発売の新型「レクサスRX」には「Lexus Safety System+」という名称で採用されており、これらの他にも同年12月発売の新型「プリウス」など、年内に5車種に導入する計画だ。
「TSS」は、レーザーレーダーと単眼カメラを用いる小型車向けの「TSSC」と、ミリ波レーダーと単眼カメラを用いる中〜大型車向けの「TSSP」の2種類に分かれている(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
TSS発表以前のトヨタ自動車の運転支援システムと言えば、「クラウン」や現行モデルのプリウスなどに採用されているミリ波レーダーだけを使う約10万円のシステムの他は、「レクサスLS」に搭載しているミリ波レーダーとステレオカメラを組み合わせた多機能かつ高価なシステムがある程度だった。ヴィッツやアクアのような小型車の場合、運転支援システムをオプションで選択する余地さえなかった。
2013年以降、軽自動車でもレーザーレーダーを用いた5万円程度の運転支援システムを選択できるようになっており、トヨタ自動車にとって運転支援システムの充実は喫緊の課題になっていた。
TSSは、この課題を解決するため、満を持して投入された運転支援システムなのである。そこで、TSSの開発を担当した、トヨタ自動車 制御システム開発部 第2制御システム開発室長を務める山田幸則氏に、TSS開発の背景や、TSSCとTSSPの特徴などについて聞いた。
MONOist 2015年4月から導入が始まったTSSですが、小型車向けのTSSCと中〜大型車向けのTSSPの2つに分けています。なぜ2つの分けたのでしょうか
山田氏 TSSは、運転支援システムの普及によって交通事故を減らすことを目標に開発しました。普及を目指すのであれば、本来は1つのシステムの方が効率的なのは確かです。量産によるコスト削減効果も見込めます。
2つに分けることになった理由の1つに、小型車のパッケージングの問題があります。TSSPで用いているミリ波レーダーは車両前方のエンブレムの裏側部分などに組み込みますが、小型車だとスペースに余裕がないため搭載が難しいのです。TSSCは、レーザーレーダーと単眼カメラを1つのセンサーユニットにまとめて、フロントガラス上部の室内側に設置できるので、この問題を解決できます。
また、日欧のNCAP(新車アセスメントプログラム)の安全テストでは、2016年から歩行者に対する自動ブレーキ機能の試験も追加されるようになります。そこでTSSPについては、普及とともに、歩行者への対応も重視して開発を進めました。
結果として2つのシステムに分かれましたが、TSSCで運転支援システムの普及を、TSSPで歩行者対応を実現することを目指しています。
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