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インタビュー

トヨタが満を持して投入した「Toyota Safety Sense」は“普及”こそが使命安全システム Toyota Safety Sense 開発担当者 インタビュー(2/4 ページ)

トヨタ自動車が2015年4月から導入を始めた新開発の運転支援システム「Toyota Safety Sense(TSS)」。安価で高機能なこともあり、市場から高い評価を受けている。そこで、TSSの開発を担当したトヨタ自動車 制御システム開発部 第2制御システム開発室長を務める山田幸則氏に、TSS開発の背景などについて聞いた。

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レーザーレーダーと単眼カメラの組み合わせで検知距離が1.5倍に

MONOist TSSCは、センサーとしてレーザーレーダーと単眼カメラを組み合わせています。このセンサーフュージョンでどのような効果が得られるのでしょうか。

山田氏 センサーがレーザーレーダーだけの場合、一般的に検知距離は10m程度といわれています。しかしこれくらいの性能だと、走行速度が時速30km以下のときに時速20km分の速度低減をするのが精いっぱいです。交通事故の死傷者低減に役立たせるには、より速い走行速度や速度差にも対応できなければなりません。

 今回、レーザーレーダーと単眼カメラを組み合わせることにより、本来レーザーレーダーが持っているポテンシャルをさらに引き出す形で、レーザーレーダー単体よりも検知距離を約1.5倍まで伸ばすことができました。このため、時速30km分の速度低減が可能になりました。

「TSSC」とレーザーレーダーだけを用いる運転支援システムの比較
「TSSC」とレーザーレーダーだけを用いる運転支援システムの比較(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 TSSにおける運転支援の基本的な考え方はドライバーの運転を補助する“アシスト”です。衝突被害軽減のための自動ブレーキ機能についても、その前に警報でブレーキを促し、ドライバーが警報に気付いてブレーキを踏んだ場合にはブレーキ力をアシストし、それでもドライバーがブレーキを踏まなかった場合は自動ブレーキをかけるという手順になっています。

 単眼カメラの存在は、この手順のうち「警報」でも役立っています。レーザーレーダーだけの運転支援システムは、動作速度範囲が時速30km以下であることが多いのですが、TSSCではレーザーレーダーでは検知できない距離でも単眼カメラが先行車両の形状を認識できるので、時速10〜80kmの範囲で動作します。この動作速度範囲の拡大も極めて重要だと考えています。

 これはTSS全体に共通しているのですが、2種類のセンサーによる組み合わせで信頼性を高めるというのが基本思想になります。距離を測るレーザーレーダーやミリ波レーダー、形状を見る単眼カメラというのが、それぞれの役割です。

MONOist トヨタ自動車の運転支援システム開発では、これまでレーザーレーダーをあまり重視していませんでした。そういった知見を積み上げられていないセンサーを使う運転支援システムの開発は大変だったのではないでしょうか。

山田氏 TSSCの開発はサプライヤであるコンチネンタルと共同で進めました。これまで運転支援システムの開発は、先行開発を含めるとかなりの期間を要していました。しかしTSSCでは、コンチネンタル側で積み上げていたレーザーレーダーに関するノウハウも活用し、約3年で開発を終えることができました。

 TSSCは、自動ブレーキ機能である「衝突回避支援型PCS(プリクラッシュセーフティ)」、車線維持を促す機能の「レーンディパーチャーアラート(LDA)」、先行車両や対向車両の存在に合わせてロービームとハイビームを自動で切り替える「オートマチックハイビーム(AHB)」という3つ機能を持ちながら、オプション価格(税抜き)で5万円に抑えました。TSSCの役割は普及である以上、安価に提供することも重要だと考えています。

「TSSC」の3つの機能
「TSSC」の3つの機能(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

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