コンパクトカーに乗ると分かる、欧州自動車メーカーのお国柄:乗って解説(5/5 ページ)
上級セグメントになるほど、自動車メーカーごとの個性が薄れつつある。数え切れない程の装備や快適な乗り心地などを追求する点で方向性が似通っていることと、かけられるコストに余裕があるためだ。しかし、コンパクトカーに乗ってみるとブランドごとの考え方やこだわりが見えてくる。
癒やし系で所有満足度をくすぐる
500C ツインエアラウンジのコンパクトカーらしいシャキッとした乗り味は、快適でもありこのクルマの個性ともいえる。カブリオなので市街地でギャップが続くとブルブルとボディーが震える。でもこの開放感を気軽に味わえること思えば、それも許せる。それにしてもDS3といい、ラテン系の自動車メーカーはバカンスを楽しむような開口の大きなトップを用意している車種が多い。
フィアット500のシリーズもやや大柄な「500X」(JEEPの兄弟車であり4ドアの4WD)まで含めるとかなりのバリエーションに成長した。快適性やプレミアム感を求めるユーザーにはスポーティで高性能なABARTH(アバルト)や500Xを提案しているのだろうが、最も個性を感じさせるのはこのシンプルな500と500Cなのだ。素朴なイタリアのコンパクトカーらしさを味わいたいなら、5速MTの500Sを選んでほしい。
ガレージにこのクルマが収まっているだけで癒される、スーパーの駐車場でも存在感を感じさせるような満足感は、このクラスの国産車、ドイツ車ではちょっと得られないものだ。
日本で乗るなら燃費や信頼性は日本車の方が優れていることが多い。しかし作り手の思想や個性がより感じ取れる欧州のクルマたちはニッチなマーケットではあるが、日本でも支持するユーザーが確実に存在するのだ。
今やイタリア、フランス、イギリスといった欧州の自動車メーカーでも、日本のサプライヤーからもパーツを調達して信頼性向上とコスト低減を図っているのは件の通りである。素材や製法、生産技術などは同じものを取り入れても、少し考え方が違うだけで製品としてのクルマはまったく違う味わいになる。これもモノ作りの面白さといえる。
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