ダイハツは「パッソ=女性向け」のイメージを変えられるか:車両デザイン(1/2 ページ)
2016年4月に発売したトヨタ自動車の小型車「パッソ」と、その姉妹車でダイハツ工業が販売する「ブーン」はダイハツ工業が全面的に開発を担った。初代と2代目のモデルは両社で共同開発し、広告宣伝で女性向けを打ち出していたのに対し、新モデルは性別や年齢を問わずにターゲットを広げる。女性向けのイメージを打ち消すための答えは、軽自動車にあった。
2016年4月に発売したトヨタ自動車の小型車「パッソ」と、その姉妹車でダイハツ工業が販売する「ブーン」の新モデルは、ダイハツ工業が全面的に開発を担った。初代と2代目のモデルは両社で共同開発し、広告宣伝で女性向けを打ち出していたのに対し、新モデルは性別や年齢を問わずにターゲットを広げる。女性向けのイメージを打ち消すための答えは、ダイハツ工業の主力製品である軽自動車が持っていた。
「パッソ」と「パッソ+Hana」が失敗したすみ分け
パッソはこれまで、テレビCMに若手女優が出演し、トヨタ最小の小型車であることを表現した「プチトヨタ」というキャッチコピーで小型車の可愛らしさを強調した広告宣伝を展開してきた。また、2014年のマイナーチェンジ後は、テレビCMにアニメ「ドラえもん」のしずかちゃんも登場させ、さらに女性に向けてアピールしてきた。そのため、女性向けのイメージが強いのではないだろうか。
しかし、これまでに設定したグレードが全て女性を対象としていたわけではない。
初代パッソ/ブーンが2004年に発売されて半年後、スポーティーなグレードとしてパッソには「Racy」が、ブーンには「カスタム」が追加された。また、ダイハツ工業は2006年にモータースポーツ参加用のベース車両として「ブーン X4」を発売。このモデルは排気量1.0l(リットル)の4気筒エンジンにターボチャージャーを組み合わせ、トランスミッションは5速MTのみとした。
2010年のフルモデルチェンジでは、商品企画に女性スタッフが参加して女性目線のクルマづくりにこだわった。トヨタ自動車はパッソに通常のグレードと、華やかなデザインの「+Hana(プラスハナ)」の2種類のグレードを設定した。ただしこのフルモデルチェンジではブーンにプラスハナに相当するグレードはない。
パッソのプラスハナは女性を狙い、通常グレードは男性も取り込む設定で、販売の間口を広げる想定だった。しかし、「販売現場では、小型車を探す男性客に通常グレードのパッソを勧めても『女性向けでしょ?』と敬遠されてしまった」(ダイハツ工業 DNGAユニット 開発本部 製品企画部 主査 次長の松本隆之氏)。
女性向けのイメージが定着したのは広告展開の効果もあるが、「通常グレードとプラスハナの違いが分かりにくかったのも理由だ」(松本氏)という。「2つのグレードは別デザインで作り分けており、マイナーチェンジでもデザインに手を入れてきたが、別のクルマと思ってもらうには差が少なかった」(同氏)。
写真で見比べると、通常グレードとプラスハナで細かなデザインの違いはあるが、見た目の印象が違うというほどではない。
パッソ/ブーンの新モデル開発は、軽自動車や小型のハイブリッド車に対し、「リッターカー」として存在感を高めるのがテーマの1つだった。女性向けの印象が残ったままでは販売機会を狭めることになりかねない。しかし、単一デザインで老若男女を問わず取り込むのは難しい。
2グレードを設定しながら明確にすみ分けるための解決策は、ダイハツ工業の軽自動車デザインにあった。
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