ダイハツは「パッソ=女性向け」のイメージを変えられるか:車両デザイン(2/2 ページ)
2016年4月に発売したトヨタ自動車の小型車「パッソ」と、その姉妹車でダイハツ工業が販売する「ブーン」はダイハツ工業が全面的に開発を担った。初代と2代目のモデルは両社で共同開発し、広告宣伝で女性向けを打ち出していたのに対し、新モデルは性別や年齢を問わずにターゲットを広げる。女性向けのイメージを打ち消すための答えは、軽自動車にあった。
「タント」と「タント カスタム」の違いは分かりやすい
ダイハツ工業は、軽自動車の1つの車種で異なるデザインを採用している。「タント」と「タント カスタム」のように「カスタム」モデルを設けている他、「キャスト」や軽オープンカー「コペン」でも複数のデザインを投入しており、すみ分け/作り分けに慣れているといえる。
パッソ/ブーンの新モデルでは、ダイハツ工業が全面的に開発/生産を担うこともあり、軽自動車で得意とするデザインの大胆な作り分けを取り入れた。
新モデルでは、パッソ/ブーンと「パッソモーダ/ブーンシルク」の2種類のグレードを設定した。パッソ/ブーンは男性ユーザーや商用での利用を、パッソモーダ/ブーンシルクは女性も含めデザイン性を重視するユーザーをターゲットとする。
パッソ/ブーンの内装は余計な装飾をせず、素っ気ないほどのシンプルなデザインだ。
一方、パッソモーダ/ブーンシルクの内装は、黒を基調に、グレーがかったベージュと差し色に赤系のマゼンタを組み合わせた。内装の設定は写真の1種類のみ。マゼンタは男性が敬遠するほど女性らしくはなさそうだが、別の差し色の設定があれば……と思う男性もいるかもしれない。
外装を見比べると、パッソモーダ/ブーンシルクは丸目のヘッドランプで、黒色のルーフと車体色を組み合わせるツートーンカラーの設定もあるため、親しみやすさがある。丸みの可愛らしさ以外は、特に女性を意識した様子はなさそうだ。
これに対し、パッソ/ブーンは、親しみやすさや個性を消し、シンプルであることに徹しているように感じられた。
パッソ/ブーンの新モデルは、デザインを大きく見直してすみ分けを図るだけでなく、それぞれのテレビCMの出演者も若い女優を起用せず、“女性専用”という先代までのイメージを消そうとしている。
また、軽自動車や小型のハイブリッド車に対抗するという本来の目標の下、ダイハツ工業が軽自動車で培った「イーステクノロジー」を取り入れて基本性能や燃費、静粛性にこだわっている。
ダイハツ工業が全面的に開発/生産を担ったパッソ/ブーンは、今後のダイハツ工業の小型車づくりを占う試金石になりそうだ。
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