ダイハツの軽自動車づくりがトヨタの小型車を強くする、第1弾は「パッソ」:エコカー技術(1/2 ページ)
ダイハツ工業は、トヨタ自動車に供給する小型車「パッソ」と、パッソの姉妹車でダイハツ工業が販売する「ブーン」を全面改良した。軽自動車で培った「e:Sテクノロジー」を応用して、JC08モード燃費は28.0km/lを達成。4WD(四輪駆動)を含む全車でエコカー減税対象となる。また、車両の重量増加を抑えながら街乗りでの走行性能や静粛性を改善した。
ダイハツ工業は2016年4月12日、トヨタ自動車に供給する小型車「パッソ」と、パッソの姉妹車でダイハツ工業が販売する「ブーン」を全面改良したと発表した。軽自動車で培った「e:Sテクノロジー(イーステクノロジー)」を応用して、JC08モード燃費は2WD(前輪駆動)で28.0km/lを達成。4WD(四輪駆動)を含む全車でエコカー減税対象となる。また、樹脂部品や高張力鋼板の採用によって軽量化を図り、車両の重量増加を抑えながら街乗りでの走行性能や静粛性を改善した。新型パッソ/ブーンはダイハツ工業が開発から生産まで一貫して担当した。税込み価格は約115万円からで、同じAセグメントで競合車種となるスズキ「ソリオ」「イグニス」などよりも大幅に抑えたことが特徴となっている。月販目標はパッソが5000台、ブーンが1000台。
軽自動車起点のモノづくりで小型車をレベルアップさせる
今回のパッソ/ブーンの全面改良では、軽自動車のシェア拡大や、小型車のハイブリッドのラインアップ増加に対応することがテーマとなった。
既存のユーザーから寄せられていた、基本性能に対する要望に応えることも課題だった。先代のパッソ/ブーンは、女性に向けたイメージを強く打ち出していたものの、40〜50代を中心に男性ユーザーが半数を占める。「男性ユーザーから走りに対するご意見を多数いただいていた。女性からも、ふらつきに対する不安の声をいただいている。より大きなクルマから乗り換えるダウンサイジングのお客さまも、基本性能に対する要求水準が高かった」(ダイハツ工業 技術本部 製品企画部 エグゼクティブチーフエンジニアの正木淳生氏)。このため、開発では基本性能の改善に重点を置いた。
また、車両サイズは取り回しがよく好評だったが、「室内空間の広さや乗り心地は課題が残っていた。プラットフォームを大幅に改良し、室内空間の拡大と安定した走りを目指した」(正木氏)。
ガソリンエンジン車トップ
パッソ/ブーンの新モデル(2WD)は、マイルドハイブリッド車/ハイブリッド車/プラグインハイブリッド車を除くガソリンエンジン車でトップの燃費となる28.0km/lを達成した。2WDは前モデルからアイドリングストップ機構を採用していたが、今回は4WDでもアイドリングストップ機構を搭載し、24.4km/lを実現している。
燃費改善にはイーステクノロジーが貢献した。2014年4月のパッソ/ブーンのマイナーチェンジで一部イーステクノロジーを採用しており、JC08モード燃費は、前回に全面改良を施した2010年2月の23.4km/lから27.6km/lに改善していた。今回のフルモデルチェンジでは、パワートレインの進化にイーステクノロジーをフル活用した。
エンジンは排気量1.0lの「1KR-FE」の設定のみで、従来あった排気量1.3lエンジンの採用は見送った。「燃費と走りのバランスが取れており、走りやすさを改善しやすいのが排気量1.0lのエンジンだった」(正木氏)ためだ。ダイハツ工業として初めて吸気ポートをデュアルポート化し、高タンブル化しながら吸気効率を向上させた。デュアルインジェクターを採用することにより、燃焼効率も改善した。アトキンソンサイクル化やピストン形状の見直しにより、圧縮比は前モデルの11.5から12.5に高めた。さらに、EGRバルブの応答性を向上して排ガスの再循環量を増やすことで燃費の改善を実現した。
全長3650mmで、フードの高い水平基調のデザインの外形は空気抵抗の低減で不利となるボディだが、空力改善を織り込んだ意匠を採用し、ドアミラーやアンテナなどパーツの見直しを行った。これにより、前モデルよりも空気抵抗係数(Cd値)を低減し、燃費改善につなげた。Cd値は「クラストップレベル」(正木氏)としている。
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