ダイハツの軽自動車づくりがトヨタの小型車を強くする、第1弾は「パッソ」:エコカー技術(2/2 ページ)
ダイハツ工業は、トヨタ自動車に供給する小型車「パッソ」と、パッソの姉妹車でダイハツ工業が販売する「ブーン」を全面改良した。軽自動車で培った「e:Sテクノロジー」を応用して、JC08モード燃費は28.0km/lを達成。4WD(四輪駆動)を含む全車でエコカー減税対象となる。また、車両の重量増加を抑えながら街乗りでの走行性能や静粛性を改善した。
パッソ/ブーンの基本骨格に軽自動車のノウハウを応用
走りに対する要求に応えて基本性能を改善するため、骨格の軽量/高剛性化を進め、削減した車両重量をアンダーボディーの補強に充てた。
スーパーハイトワゴンタイプの軽自動車「タント」から始めた部品の樹脂化を、パッソ/ブーンにも広げている。フロント/リアバンパーは従来も樹脂製だが、フロントフェンダーやバックドアに樹脂外板を採用した。また、軽スポーツカー「コペン」と同様に樹脂燃料タンクも搭載する。小型車用に容量は拡大しているが、剛性と衝撃吸収性を両立する構造はコペンと共通とした。
この他、ハイトワゴンタイプの軽自動車「ムーヴ」の「Dモノコック」と同様に軽量/高剛性なボディを目指した。具体的には、アウターパネルとインナーパネルの間の補強材に替えてサイドアウターパネルに全面的に厚板ハイテン材を採用し、構造断点を減らすことで骨格全体で衝撃を受け止める構造としている。
これらの工夫により、車両全体で前モデル比50kgの軽量化を達成した。
浮いた重量はアンダーボディの補強で相殺されるが、車両重量は前モデルと同じ910kgとなる。アンダーボディの高剛性化により操舵性やタイヤの接地感の向上を図った。アンダーボディの改良に合わせてサスペンションも剛性向上を進めた。
2WDはフロント、リアともにスタビライザーを採用し、ロールやふらつきを抑制する。フロントサスペンションのショックアブソーバーに大径シリンダーや大径ロッドを採用することによって、操縦安定性の改善や乗り心地の向上を実現している。リアサスペンションは、トーションビームのねじり剛性を高め、操縦安定性を改善している。
走行性能だけでなく静粛性にもこだわった。振動や音の発生と伝達を抑制するとともに、吸音材の最適に配置した。ステアリングは支持剛性を向上し、路面から伝わる振動を低減している。これにより「街乗りでのフラットで上質な乗り心地」(正木氏)を実現させたという。
運転支援システムは、パッソ/ブーンともに、ダイハツ工業が開発した「スマートアシストII」を採用している。
大人5人が普通に乗れるベーシックなクルマに
室内空間の課題は、ホイールベースの延長とリアシートの配置を後方にずらすことによってクリアした。ホイールベースは前モデル比で50mm、前席と後席の乗員間の距離は75mm拡大した。
ただし、従来モデルと比べて「荷室のアレンジの自由度が多少犠牲になった。荷室の広さよりも、大人5人が普通に乗れるベーシックなクルマとすることを優先した。このあたりも含めて『やっぱり軽自動車と登録車は違うね』と感じていただきたい」(正木氏)。全長や全幅は従来の寸法を維持し、取り回しの良さは残している。
シートは、ムーヴのものを小型車向けに改良した。形状をムーヴから大きく変更しており、骨盤を保持して快適に座ることができるようフィット感を改善した他、旋回時などでも安定したホールド性を持つとしている。
正木氏は、今後ダイハツ工業が展開する小型車づくり「DNGA」について、「詳細はこれから決めて行くことになるが、軽自動車の成功例の取り込みは今後も積極的に行うことになる」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- トヨタが新型「パッソ」に自動ブレーキを搭載しない理由
新型「パッソ」は、新型エンジンの搭載により、ガソリンエンジン搭載登録車でトップとなる燃費を達成。デザインも大幅な刷新を図った。その一方で安全機能は、横滑り防止装置や「緊急ブレーキシグナル」を標準装備したものの、自動ブレーキに代表される運転支援システムの搭載は見送っている。 - トヨタがダイハツを100%子会社化、小型車開発をダイハツに集約へ
トヨタ自動車とダイハツ工業は、トヨタ自動車がダイハツ工業を完全子会社化することで合意した。ダイハツ工業は2016年7月27日に上場を廃止し、2016年8月1日からトヨタ自動車の完全子会社となる。ダイハツ工業はトヨタグループの小型車の商品開発や新興国市場向けの開発/調達/生産を主導する。 - トヨタの完全子会社になるダイハツ、TNGAならぬ「DNGA」で小型車開発を強化
ダイハツ工業は、2016年8月にトヨタ自動車の完全子会社となることに向けた組織改正を実施すると発表した。従来の機能ごとの本部制を廃して4つのユニットを置き、TNGA(Toyota New Global Architecture)ならぬ「DNGA」というクルマづくりを推し進める。ダイハツブランドの進化とトヨタグループの小型車強化を両立する体制とする。