変革する自動車のCFRP技術、オートクレーブ成型は5年以内に消える!?:ランボルギーニ 先進素材開発センター潜入レポート(4/4 ページ)
ランボルギーニのACRC(先進素材開発センター)にモータージャーナリストの西川淳氏が潜入取材。ACRCトップのルチアーノ・デ・オト氏によれば、短繊維を使って短時間で成型できる「フォージドコンポジット」成型の採用が広がり、これまで広く利用されてきたプリプレグオートクレーブ成型は5年後には消えてなくなるという。
PA成型は数時間かかるが、FC成型は20分で完了
FC成型ならどうか。直径4mほどの、メリーゴーランドのように回転する特殊な装置の中、専用樹脂でできたメス金型の上に、さきほどのただ重ね合わせたたけのプリプレグ材を正確に載せる。張り合わせるのではなく、ただ載せるだけなので、とても簡単だ。
後は扉を閉めてスイッチを押すのみ。“メリーゴーランド”が1周するうちに、上からオスの金型が降りてきて、先ほど載せておいた素材に覆い被さり、真空引きしたのちに、プリフォームされる。ここまで、わずかに10分。
加圧と加熱を行うプレス装置に先ほどプリフォームした素材を設置する。金型はもちろん金属製だ。115℃前後で加熱しながら300barの圧力を10分間掛けて完成となる。
プリプレグ素材の配置から、プリフォーム、プレス行程を経て完成に至るまで、わずかに20分。FCの成型品が仕上がった。マーブル模様の仕上がりそのものは、5時間かけて作ったオートクレーブ成型品よりも格段に美しい。
FC成型は将来、メインの技術として認められるのかどうか。その鍵は、ユーザーの側にあると言えそうだ。PA成型のカーボン模様こそ最上、という信仰にも似た根強い意識を変えられるかどうかに掛かっていると筆者は思う。ランボルギーニが今、FC成型を積極的に高額オプションの装飾パーツに使っている背景には、われわれの側の意識改革も意図しているとみて良さそうである。
そして、デ・ソト氏はこう言い切った。「この5年以内に自動車産業から、旧来からの手間暇掛かるPA成型は、消えてなくなる」、と。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CFRP製自動車部品の採用拡大に必要なことは「工場の自動化」
「第27回日本国際工作機械見本市」の特別講演に三菱レイヨン 炭素繊維・複合材料技術統括室 担当部長の小川繁樹氏が登壇。同社独自の炭素繊維強化樹脂(CFRP)の生産技術や今後の展開について語った。 - BMWの電気自動車「i3」は軽量化を突き詰めたクルマだった!
BMWは、新たに開発した電気自動車「i3」を発表した。i3は、大容量のリチウムイオン電池の搭載による重量増加を相殺すべく、アルミニウムや炭素繊維樹脂などの軽量素材を多用し、同クラスのエンジン車よりも軽い1195kgまでの軽量化に成功している。 - 炭素繊維強化熱可塑性樹脂のボディは重さ47kg、走行可能な試作車も開発
帝人は、「オートモーティブワールド2016」において、熱可塑性樹脂を用いる炭素繊維複合材料「Sereebo」で製造した自動車のホワイトボディを披露。このホワイトボディを使って走行可能な車両も試作している。 - オール樹脂製自動車は実現できるのか、CFRPだけじゃない材料メーカーの取り組み
自動車の材料を金属から樹脂に置き換えれば大幅な軽量化が可能だ。炭素繊維強化樹脂(CFRP)が注目を集めているが、その他にも樹脂の採用拡大に向けたさまざまな取り組みが進んでいる。 - CFRPの知財マップ/炭素繊維で世界シェア7割を占める日本企業の知財勢力図は?
炭素繊維強化樹脂(CFRP)の原料として注目を集める炭素繊維(CF)。その世界市場の7割を日本のメーカーが握っている。CFRPとCFの知財動向をチェックする。