CFRP製自動車部品の採用拡大に必要なことは「工場の自動化」:JIMTOF2014 特別講演リポート(1/2 ページ)
「第27回日本国際工作機械見本市」の特別講演に三菱レイヨン 炭素繊維・複合材料技術統括室 担当部長の小川繁樹氏が登壇。同社独自の炭素繊維強化樹脂(CFRP)の生産技術や今後の展開について語った。
2014年10月30〜11月4日に、工作機械と関連製品/技術の展示会「第27回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2014)」(東京ビッグサイト)が開催された。同年11月4日の特別講演では、三菱レイヨン 炭素繊維・複合材料技術統括室 担当部長の小川繁樹氏が「炭素繊維複合材料の自動車部品への適用と今後の展開」をテーマに、三菱レイヨンにおける炭素繊維強化樹脂(CFRP)の生産技術の開発や、自動車の構造部材への適用事例などについて紹介した。
三菱レイヨン独自の生産技術を開発
CFRPは、自動車の構造部材として広く利用されている鉄やアルミニウムより軽量でありながら、高い剛性を持つ。そのため、自動車の軽量化に貢献できる部材として注目されている。小川氏は「CFRPは高い剛性を持ちなが軽量であるというメリットに加え、部品のデザインが行いやすく、振動減衰性能や衝突エネルギーの吸収性が高いという利点もある。車重の軽量化や足回りの小型化に貢献できるため、自動車の燃費性能の改善や走行・安全性能の向上が期待できる」と説明する。
こうしたメリットがあるCFRPだが、炭素繊維などの構成材料のコストが掛かるため、価格が高い。また、熱硬化性樹脂を用いることが多いCFRPは、部品成型に時間を要するため、生産性が低いといった課題もある。これらの課題に対し、各企業はより生産性の高い製造方法の開発に取り組んでいる。
そういった製造法の1つとして、小川氏は三菱レイヨンと同社の子会社であるチャレンジ(埼玉県狭山市)が共同開発した生産手法であるPCM(Prepreg Compression Molding)法を紹介した。一般的に生産性が高いといわれているRTM(Resin Transfer Molding)法は、金型で製品の形状に加工した炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてから、加熱し圧力を掛けて硬化させる。一方、三菱レイヨンらが開発したPCM法は、プリプレグ(炭素繊維に樹脂を浸透させたもの)を加工したプリフォーム(製品の形状に加工した予備形状のもの)を、金型でプレスして加熱や加圧を行い硬化させるという手法だ。
このPCM法のメリットについて小川氏は「成形サイクルが約10分と短い。また、高温・高圧のプレスを行うため、部材表面の平滑性が高いものが生産でき、表面仕上げ状態がクラスAに対応するクルマの外板部材を提供できる。さらに、ボイド(空洞)やピンホール(小孔)といった欠陥が少ないのもPCM法の特徴。また、これまで三菱レイヨンが培ってきた金型技術や、ガラス繊維の製造で利用していたプレス装置を利用できるというメリットもある」と説明する。
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