変革する自動車のCFRP技術、オートクレーブ成型は5年以内に消える!?:ランボルギーニ 先進素材開発センター潜入レポート(3/4 ページ)
ランボルギーニのACRC(先進素材開発センター)にモータージャーナリストの西川淳氏が潜入取材。ACRCトップのルチアーノ・デ・オト氏によれば、短繊維を使って短時間で成型できる「フォージドコンポジット」成型の採用が広がり、これまで広く利用されてきたプリプレグオートクレーブ成型は5年後には消えてなくなるという。
プリプレグオートクレーブ成型と「フォージドコンポジット」成型を比較
今後、彼らが最も力を入れていく成型技術が、フォージドコンポジットであることは間違いない。フォージドコンポジットとは、ランボルギーニの登録商標で、短繊維のプリプレグ素材を使った、プレスモールディング成型と呼ばれる手法の1つ。目的に合わせた形状とサイズに切り抜いたプリプレグ素材を必要枚数だけメス金型に重ねて配置し、オス金型で加圧、加熱し、硬化成形させるもの。
織物を使用するので高強度の成型品を得られるとはいうものの、長繊維プリプレグのオートクレーブ成型品と比べて、同じ形状、肉厚であれば、性能的にはやや劣ってしまう。そのデメリットを、オートクレーブ成型に比べて、圧倒的に短い成型時間と、高い成型自由度(=強度不足を、形状や一体成型で補う)でメリットに変えるというわけだ。要するに、設計次第、使い方次第で、商品性能的には従来のプリプレグオートクレーブ成型品と並び立つものになる。
事実、ランボルギーニは既に、セストエレメントというサーキット専用の限定モデルにおいて、骨格からボディーパネル、内装までを全てフォージドコンポジット成型で作り上げた実績がある。
プリプレグオートクレーブ(以下、PA)成型とフォージドコンポジット成型(以下、FC)の両方を、実際に作業してみた。いずれも同じ寸法のオメガ状パーツを成型する。
必要なサイズ、形状に切り出したプリプレグ素材を用意するところまでは同じ。ただし、PA成型には長繊維プリプレグ材、FC成型には短繊維プリプレグ材をそれぞれ用いる。PA成型では金型に合わせて積層するため小一時間ほど掛かってしまったものが、FC成型ではそのまま重ね合わせるだけでいいから、ものの数分で終わる。
PA成型では、ここからエア抜き用の布でくるんで、加圧用バッグフィルムを被せる。なかにエアバルブを入れた状態で加圧用バッグフィルムを被せたら、小さな穴を開けてバルブをつなぎ、真空引きを行う。
この作業も機械任せにはできない。吸い取ってもらいつつも、作業者自身の手でフィルムを引っ張り上げては引き寄せて、空気が残らないよう丁寧に真空引きをアシストしていく。残っている空気を感じる指の感覚が大事で、職人ワザといわれるゆえんである。そしてオートクレーブに投入し、4時間ほど待って、ようやく完成した。
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