弱点である“ゆがみ”解消で産業用途に期待、新駆動方式採用のCMOSセンサー開発:産業用画像技術
キヤノンは、グローバルシャッター機能を搭載したCMOSセンサーを新たに開発。信号読み出しの新駆動方式と新たな画素構造により、広いダイナミックレンジを実現する。
キヤノンは2016年8月31日、グローバルシャッター機能を搭載したCMOSセンサーを新たに開発したと発表した。今後、映像分野とともに、産業用・計測用分野への活用・応用を進めていくとしている。
新たに開発したCMOSセンサーは、全画素を同時に露光するグローバルシャッター機能を搭載し、高速で動く被写体を撮影する場合にも、ゆがみなく、形状を正確に撮像することが可能である点が特徴である。
一般的なCMOSセンサーは、画素行ごとに順次露光を行うローリングシャッター方式が用いられており、画素によって信号読み出しにわずかながら時間差が生じるため、高速に動く被写体がゆがんで撮像されることや、撮影中にフラッシュを使うと上下で画像の明るさが異なるフラッシュバンド現象が発生する。新たに開発したCMOSセンサーでは、この問題を解消。全画素を同時に露光するグローバルシャッター機能を搭載し、高速に動く被写体を撮影する場合にも、ゆがみなく、正確な形状を撮像できる。
従来のローリングシャッター方式のCMOSセンサーはこのゆがみがあることから、移動物の検査などには使用が難しかった。新センサーでは、被写体の形状を高い精度で認識できるため、検査用カメラなど産業用途への活用・応用が期待される。
さらに、光を電気信号に変換し、信号電荷をメモリに蓄積する際に新駆動方式を採用することで、飽和信号量を大幅に拡大。光を効率的に取り込む構造を採用し、各画素内の配置を最適化することで、高感度化とノイズ低減を実現可能としている。これにより、広いダイナミックレンジを実現し、輝度差の大きい撮影シーンにおいても、高画質で高精細な映像の撮影を可能とする。
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