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北京モーターショーに見る、中国地場自動車メーカー変化の兆し新興国自動車事情(1)(5/5 ページ)

自動車市場の成長を支えるのは既に成熟し切った日米欧ではなく新興国だ。本連載では、その新興国各国のモーターショーや開催都市の自動車事情を紹介していく。第1回は、世界最大の自動車市場となって久しい中国の首都・北京で開催された「第14回北京モーターショー」のレポートをお送りする。

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SUVとクロスオーバーの大増殖

 ところでモーターショーといえば新型車デビューの場ですが、今回スポットライトを浴びた新型車がことごとくSUVかクロスオーバーというのには驚かされました。そしてそのスタイルの傾向が、かなり似通っていることに気づかされます。実はどのメーカーでも、デザイナーの能力にほとんど差はありません。それどころか、先進国のメーカーにも劣ることはありません。彼らがアンケートや調査で得た「一般的な中国人の嗜好」を盛り込むと、おのずとアウトプットが似たようなものばかりになってしまうのは必然なのです。

長城汽車「哈弗H6クーペ」吉利汽車の「博越」長安汽車の「CS95」 典型的な中国人の嗜好を反映したSUV最新モデル3台。長城汽車「哈弗H6クーペ」(左)は大人気モデル。安価な大衆車で人気を集めている吉利汽車は上級モデル市場に進出し「博越」を発表した(中央)。長安汽車「CS95」はグリルのモチーフに古代中国の礼器の形状を採用している(右)(クリックで拡大)

 例えば一般的な中国人は「見栄えのする大きなグリルがどっしりと構えた、垂直に近い角度でそそり立ったフロントエンド」を好む傾向が強いようです。ブランドイメージの薄いメーカーがこれを愚直に反映させると、どれも大同小異で没個性なスタイルになってしまうわけです。これを避けて個性を演出するために、ブランドアイデンティティーの確立を目指すメーカーが増えている、というわけですね。

 恐らく2017年は、今回よりもさらに新型のSUVやクロスオーバー車が増えていることでしょう。しかし何事もダイナミックに変革する国ですから、もしかすると「その次のトレンド」の胎動が見られるかもしれません。

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筆者プロフィール

古庄速人(ふるしょうはやと)

工業デザイナーを目指し、専門学校の自動車デザイン学科に入学。修了後はカーデザイン専門誌の編集に携わりながら、フリーランスのライターとしても活動を開始。現在は自動車関連誌や二輪誌、Webメディアなどで記事やコラムを執筆中。技術と感性の双方の視点から、さまざまなトランスポーテーションのデザインをチェックしている。また新しい「乗り物」や新興国のモータリゼーションに強い興味を持ち、世界各国のモーターショーやモーターサイクルショーの視察を続けている。日本カーデザイン大賞の選考委員も務める。



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