先行き不透明な中国自動車市場、エコカーとクロスオーバーで乗り越えられるか:北京モーターショー2016レポート(1/4 ページ)
中国経済の成長鈍化により同国の自動車市場は先行き不透明な状態になっている。そんな状況下で開催された「北京モーターショー2016」では、厳しい環境規制に対応するエコカーや、唯一大きな成長を見せているクロスオーバー車の出展が相次いだ。桃田健史氏による同ショーのレポートする。
市況は一時的に改善するも、中長期は不透明
世界最大の自動車市場・中国の先行きが不透明だ。
中国自動車工業会の発表では、2015年の自家用車の製造と販売の台数はそれぞれ2107万9400台(前年比5.8%増)と2114万6300台(7.3%増)であり、市場は好調を維持しているように見える。
だが、中国経済は全体的にスローペースになっていることは明白。果たして、中国自動車市場の実態はどうなっているのか。市場の現状と動向を知るため、「北京モーターショー2016」(報道陣向け公開日:2016年4月25〜26日、一般公開日:4月29〜5月4日)を取材した。
4月26日は、午前9時から各社20分間ずつ、E1〜4、およびW1〜4の展示会場で合計82社の記者会見が行われた。記者会見の合間を縫って、日系各メーカーが日本の新聞社、テレビ局、通信社との記者懇親を実施し、筆者も参加した。
その中で、市況については各社がほぼ同じ考えを示した。
少し前から振り返ると、2014年後半から販売が鈍り始め、ディーラーの在庫が拡大。一般的に適正水準とされる在庫1カ月分を大幅に超過する2〜3カ月分に達したため、ディーラーは大幅ディスカウントを展開し、結果的に赤字が拡大する悪循環に陥った。そこに、2015年春から夏にかけての株価の大幅下落で消費意欲が一気に減退した。
こうした市場の低迷を立て直すため、中国の財務部は排気量1.6l(リットル)以下の乗用車の自動車購入税を10%から半減させて5%まで引き下げる税制優遇措置を発表した。対象期間は、2015年10月1日〜2016年12月31日まで。この施策によって、各社の小型車販売が一気に盛り返した。2015年の通年では、排気量1.6l以下の乗用車の販売台数は乗用車市場全体の68.6%に相当する1450万8600台に達している。
このような市場の動きと並行して、各メーカーが工場での生産調整を行うことにより、2016年1〜3月期時点ではディーラー在庫は適正水準に戻ったという。
一方、今後の市場動向については「絶対的な市場規模は大きいとはいえ、先行きは不透明」との見方が主流だ。その背景には、中央政府が今後、市場をどのように育てたいのかという「思惑」が読めないという点がある。
2016年3月の全国人民代表大会(全人代)で、今後5年間の経済発展に対する第16次五カ年計画を発表。その中で、製造業に対して「量より質の向上」を求めている。自動車産業では、中国地場メーカーの合従連衡を促進する可能性が高い。また、欧米、日本、韓国メーカーによるブランドの乱立による供給過多に対しても注意を払っている。だが、そうした中国政府による市場への強制介入が、いつどのような形で行われるかを予測することは不可能だ。そうした情勢下で、前述の税制優遇措置が終わる2017年以降、市場の動きが読みづらいのだ。
全ては政府の思惑次第という中国市場の独自性が、経済成長の鈍化によってさらに強まった印象なのだ。
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