先行き不透明な中国自動車市場、エコカーとクロスオーバーで乗り越えられるか:北京モーターショー2016レポート(2/4 ページ)
中国経済の成長鈍化により同国の自動車市場は先行き不透明な状態になっている。そんな状況下で開催された「北京モーターショー2016」では、厳しい環境規制に対応するエコカーや、唯一大きな成長を見せているクロスオーバー車の出展が相次いだ。桃田健史氏による同ショーのレポートする。
CAFÉとNEVの影響色濃い出展内容
中国政府の思惑はパワートレインに対しても極めて大きな影響を与えている。
まず、企業別平均燃費(CAFÉ)についてだ。2020年の設定目標は5l/100kmと厳しい。
また、ここへきて、自動車メーカー各社が頭を悩ましているのがNEV法(New Energy Vehicle規制法)だ。これは、米国カリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle)法を参考にしている。自動車メーカーに対して、電動車を主体とした次世代車の販売台数と販売時期を要求し、目標に未達の場合は多額のペナルティを課すというものだ。
このNEV法の策定では、カリフォルニア州環境保全局(CARB)とのつながりが強いカリフォルニア大学デービス校(UCD)と、天津にある国立自動車研究所に相当する中国汽車技術研究中心(CATRAC)が連携しており、NEV法はアメリカの“お墨付き”といえる。
こうしたCAFÉとNEVのダブルパンチを踏まえて、日系メーカーそれぞれは中国市場戦略において違ったアプローチを試みようとしている。
例えばトヨタの場合、ハイブリッド車の販売台数増で狙う。ただし、世界戦略車「プリウス」は中国人の趣向に合わず、月販200台レベルから脱することができない状況。その打開策として2014年から導入した、「カローラ ハイブリッド」、「カローラレビン ハイブリッド」が奏功しており、今後は既存ガソリン車でハイブリッドラインアップを拡充する。
さらに、2018年には中国国内でプラグインハイブリッド車の製造を開始することを明らかにした。前回、2014年の北京モーターショーの際、トヨタは「2020年までに、弊社の中国販売台数の3割をハイブリッド車にする」との目標を掲げていた。これに対して今回、記者懇親の場でトヨタ幹部は「CAFÉやNEVなど(中国政府からの新たなる要求項目を踏まえて)の影響によって、(2014年)当初に想定していたモデルラインアップでは、目標達成は難しくなった」と事業の軌道修正を示唆。
また、「新エネルギー車において、ハイブリッド車では販売奨励金や恩典がつかない。だが、弊社の技術の中核はハイブリッド車であり、CAFÉとNEVをクリアするための手段として、ハイブリッド車の拡充する」と語った。また、中国市場における電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)については、「まずはプラグインハイブリッド車から」として、ざっくりとしたイメージや導入時期を含めて明確な回答を避けた。
これに対してホンダの場合、「走りの良さ」と「走りの愉しさ」による商品の差別化を狙う訴求戦略「FUNTEC」を続ける。主力エンジンは、ダウンサイジングターボとするが、それだけではCAFÉにマッチできないため、ハイブリッド車を併用する。その際、関連する電子/制御系の部品など現地調達率を引き上げる計画だ。また、プラグインハイブリッド車の現地生産については、2020年ごろをめどに検討中だという。そして、ホンダもトヨタ同様、EVとFCVの市場導入の可能性や時期について、現時点では詳しく語ろうとしなかった。
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