北京モーターショーに見る、中国地場自動車メーカー変化の兆し:新興国自動車事情(1)(4/5 ページ)
自動車市場の成長を支えるのは既に成熟し切った日米欧ではなく新興国だ。本連載では、その新興国各国のモーターショーや開催都市の自動車事情を紹介していく。第1回は、世界最大の自動車市場となって久しい中国の首都・北京で開催された「第14回北京モーターショー」のレポートをお送りする。
中国地場メーカーによる独自車種開発の現状
もちろん中国地場の大手メーカーは、技術開発力が必要だと考えています。そこで世界中の開発企業やサプライヤと提携して少しずつ力を蓄え、同時に自信をつけてきているというのが現状のようです。例えば広州汽車では、Porsche Engineering(ポルシェエンジニアリング)をはじめとした幾つかの欧州企業の協力で独自プラットフォームを作り上げた、ということを語ってくれました。「確かにまだ独力で全てを開発することはできない。でも私たちが仕様を決め、どこのコピーでもないオリジナルなプラットフォームを手に入れたのだ」とのことです。
北京汽車グループで新エネルギー車を手掛ける北汽新能源では、燃料電池エクステンダーEVのメカニズムや、小型ガスタービンを発電機に使用するレンジエクステンダーEVの模式図が展示されていました。
比亜迪汽車(BYD)が量産PHEVに採用している「5-4-2テクノロジー」。これは「時速0〜100km加速が5秒以内、4輪駆動、100km走行に必要なガソリンが2リットル以内」という意味のネーミング(クリックで拡大)
またデザイン部門は、エンジニアリング領域よりも早く自主開発能力が備わったようで、デザイナーたちは自社のデザインについて熱心に語ってくれました。これは提携する外資メーカーから提供されたプラットフォームやモノコックをベースに、いかに独自の個性を表現するかということを以前から手掛けていたおかげかもしれません。上海汽車や奇瑞汽車など、ブランドアイデンティティーやブランド固有のデザイン言語を打ち出し、アピールするメーカーはどんどん増えてきています。そうした企業の努力の成果が、いよいよ表舞台に躍り出る時期になったのだな、というのが今回のショーの印象です。
もちろん開発能力に乏しい一部のメーカーでは、リバースエンジニアリングで得たとおぼしき、どこかで見たようなモノコック形状や意匠を持つものも存在します。ただそうした企業が今後大きく飛躍することはないのだろうと確信できるくらい、中国地場大手の積極的で貪欲な姿勢が目立っていました。
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