北京モーターショーに見る、中国地場自動車メーカー変化の兆し:新興国自動車事情(1)(3/5 ページ)
自動車市場の成長を支えるのは既に成熟し切った日米欧ではなく新興国だ。本連載では、その新興国各国のモーターショーや開催都市の自動車事情を紹介していく。第1回は、世界最大の自動車市場となって久しい中国の首都・北京で開催された「第14回北京モーターショー」のレポートをお送りする。
どのメーカーもEVをアピール
大手メーカーを含めた全体的な傾向として感じたのは「既存車種をベースにしたコンバートEVがやけに多い」ということでした。これは、中国政府が掲げる「2020年までに新エネルギー車を500万台普及させる」という目標に対応する動きです。政府は2015年で終えるはずだったEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)への補助金を、段階的に減額しながらも2020年まで延長することにしました。この補助金制度は、中国国内で製造された車両だけに適用されることから、国内メーカーのエコカー開発を促したいという思惑もあるようです。
Magna Styer(マグナ・シュタイヤー)が開発業務を受託している観致汽車のコンバートEVコンセプト。「3Q・LECTRIQ」(右手前)と「5Q・LECTRIC」(左手奥)の2台が公開された(クリックで拡大)
しかしEVの商品企画まで手掛けられるメーカーは非常に少ないようで、ある現地メーカーからは「自身で開発プロジェクトを進められるのは、国内ではせいぜい4社ぐらいではないか」という話も耳にしました。国内の電動コンポーネント会社や他国のエンジニアリング企業、電装メーカーなどに開発を委託し、丁寧に仕立て直しているところもあります。しかしいくつかの企業が発売してる汎用EVユニットを購入し、エンジンを降ろして載せ換えただけというメーカーも多いのが事実です。
もっとも、そうした「ユニットを購入してポン付けしただけ」の車種でも、床下をのぞいてみると多くがメカニカルレイアウトに合わせてサブフレームを作り直していました。「普段使いで不満を感じない」というレベルであれば、それでさほど問題ないのでしょう。「クルマは各部位のすり合わせが重要。だからEVであっても、そう簡単に作り出せるものではない」というのは事実かもしれません。しかし「そこそこのスペックを持ち、それに見合った価格であればよい」という価値観の前では、オーバースペックで高価な商品は訴求力を持ちません。
比較的手軽に仕立てたコンバートEVでも、将来は中国でそれなりの販売ボリュームを確保する可能性は大きいのではないかと感じました。世界最大のローカル市場がトレンドをリードすることで、グローバルな「クルマの評価基準」を変えてしまう、なんてこともあるかもしれません。
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