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北京モーターショーに見る、中国地場自動車メーカー変化の兆し新興国自動車事情(1)(2/5 ページ)

自動車市場の成長を支えるのは既に成熟し切った日米欧ではなく新興国だ。本連載では、その新興国各国のモーターショーや開催都市の自動車事情を紹介していく。第1回は、世界最大の自動車市場となって久しい中国の首都・北京で開催された「第14回北京モーターショー」のレポートをお送りする。

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新しい価値を持つ乗用車に熱い視線

 それではショー会場の様子に話を移しましょう。今回の開催テーマ「創新変革」を尊重し、新しい動きから紹介することにします。今や世界中で新しいサービスやメカニズムで脚光を浴びるベンチャー企業が登場していますが、中国でも状況は同じ。むしろ日本とはケタ違いのスケールに圧倒されてしまいそうになりました。

 現地メディアから大きな注目を集めていたのは「LeSEE」というコンセプトEV(電気自動車)を公開したLeEco。この会社はまだ自動車メーカーと呼べる存在ではありません。母体は「楽視網」という企業グループで、主要ビジネスは動画配信サイト「楽視視頻」の運営という異色の出展社です。中国といえば、違法にコピーされたコンテンツが溢れる海賊版天国。しかし正規にビジネスを展開する動画配信サイトの充実によって、海賊版市場は縮小しているという話も耳にします。これが真実かどうかはわかりませんが、LeEcoの動きから想像するに、動画配信が大きな収益を上げていることは本当なのでしょう。

LeEcoが公開した「LeSEE」後席は乗員の体格や姿勢に合わせて形状が変わるというコンセプトだ LeEcoが公開した「LeSEE」(左)。後席は乗員の体格や姿勢に合わせて形状が変わるというコンセプトだ(右)(クリックで拡大)

 LeSEEは、自動運転機能を備えるだけでなく、スマートフォンで車外から操作できるのが特徴。自動運転のための環境が整った場所でタクシーとして運用すれば、配車アプリと連携させることで無人の車両を直接呼ぶことが可能になるとのこと。LeEcoでは、LeSEEを「共有を前提とした、未来のモビリティエコシステムの一部」だと説明しています。

 またLeEcoは、英国Aston Martin(アストンマーティン)や、米国ベンチャーのFaraday Future(ファラデーフューチャー)と戦略的提携を結んでいることも発表しています。実際にブースには、LeEcoが開発したIOV(インターネット・オブ・ビークル)システムを搭載したアストンマーティンのプロトタイプEV「ラピードE」も展示されていました。この電動スポーツセダンは2018年の発売を目指して共同開発が続けられているということです。

アストンマーティンの「ラピードE」インテリアに大きな液晶ディスプレイを持つ アストンマーティンの「ラピードE」(左)はインテリアに大きな液晶ディスプレイを持つ(右)(クリックで拡大)

 この他のEVベンチャーでは、奇点汽車も紹介すべきメーカーです。走行可能なプロトタイプは京都のEVべンチャー・GLMが開発したプラットフォームを採用しているというのが注目点。しかし自社ではブースを構えず、プロトタイプを製作した企業のブースの一角に置かれていたため、詳しい情報を得られなかったのが残念です。今後の動向を注視したいですね。

GLMのプラットフォームを採用した奇点汽車のコンセプトカーGLMのプラットフォームを採用した奇点汽車のコンセプトカー GLMのプラットフォームを採用した奇点汽車のコンセプトカー(クリックで拡大)

 ちなみにITとの連携という点では、上海汽車が、Alibaba(アリババ)グループの開発した独自OS「YunOS」を搭載するSUV「栄威RX5」を発表したというのもトピックです。ただしショー会場でRX5のドアが開けられることはなく、具体的にどういった機能が提供されるのかは不明。説明を聞く限りでは「スマートフォンと車両の間でさまざまな情報を共有し、ドライブをサポートする」といったような感じで、Apple(アップル)の「CarPlay」に近いものではないかと想像しました。

上海汽車の「栄威RX5」は「初の量産インターネットカー」という触れ込みで紹介された
上海汽車の「栄威RX5」は「初の量産インターネットカー」という触れ込みで紹介された(クリックで拡大)

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