世界を変えるAI技術「ディープラーニング」が製造業にもたらすインパクト(2/5 ページ)
人工知能やディープラーニングといった言葉が注目を集めていますが、それはITの世界だけにとどまるものではなく、製造業においても導入・検討されています。製造業にとって人工知能やディープラーニングがどのようなインパクトをもたらすか、解説します。
今、人工知能の進化をリードする3つの要素
今までも人工知能が技術トレンドとして脚光を浴びたことがありました。そのため今を第3次人工知能ブームと呼ぶむきもあります。しかし実験室内の研究成果だけで終わらず現実のサービスにも本格利用されるようになってきている今、多くの人が今の人工知能にかつてないレベルの期待を寄せています。
それは今の人工知能を進化は、過去にはない3つの要素があり、それによってけん引されているからだと指摘されます。3つの要素とは「ビッグデータ」「最先端のモデル」「GPUアクセラレーター」です。
- ビッグデータ
ニューラルネットワークの学習には大量の学習用データが必要です。現在は、インターネットに接続される多くの機器から日々大量のデータが生成されています。ビッグデータです。
例えばYouTubeには毎分、400時間に相当されるビデオデータがアップロードされているといわれますし、他にも今後は身につけるIoTデバイス等からもさまざまなデータが生成されてくることになるでしょう。
人力では処理しきれないほどのこの豊富なデータを利用してコンピュータ自身に学習を行わせることで、従来の手法では見つけられなかったような特徴が見いだされ、利用できるようになります。
- よりよいモデル
ニューラルネットワークのモデル(アルゴリズム)は、かつて提案されていただけだった手法も効果があるものと実証され、それをベースに改善や新しいモデル・手法が生み出されていっています。
大学を中心に出発したこの“ディープラーニングのビッグバン”には、IT系の巨大企業が更に多くの研究リソースを投下しているので、その進化のスピードは今後さらに加速していくでしょう。
- 強力なGPUアクセラレーター
ビッグデータがあり、より進化した複雑なニューラルネットワークのモデルがあっても、それを実行できる高速なコンピュータがなければ現実的な利用はできません。かつてはここにもコンピュータの絶対的な処理能力という壁がありました。
特にニューラルネットワークの学習プロセスは非常に膨大な計算量が必要とされるので、より大量のデータや新しいモデルが用意できても、その有効性を実証することを現実的な時間内に行うことが難しかったのです。
今はこのニューラルネットワークの処理に、並列処理に長けたアーキテクチャを持つGPU(グラフィックス処理装置)が非常に有効であること分かり、GPUがディープラーニングに標準的に使われるようになっています。
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