5Gが達成を求められている、技術上のマイルストーン:SYSTEM DESIGN JOURNAL(3/5 ページ)
「第5世代移動通信(5G)」への期待と要求は高まっていますが、そのウイッシュ・リストの内容はさまざまです。リスト内容を取捨選択する(恐らく)最上の方法は、5Gについて考えているエンジニアが、既に少なくとも3カテゴリ存在するのを認識することです。
MIMO
複数のセルサイトが複数の周波数帯を通った信号を1台のデバイスに送り込むなど、状況が複雑になるにつれて、MIMO(Multiple-In/Multiple-Out)アンテナの次数を上げることがますます有利になります。
基地局は、大規模なMIMOアンテナアレイを使用して狭ビームを個々のエンドポイントに向けることができます。エンドポイントデバイスは、はるかに少ないアレイでそれ自体の受信機の感度をビーム状にしてエネルギーを伝達できます(図2)。
MIMOビーム形成により、送信電力を抑えながらチャネル特性を改善できます。しかし、ビームを形成するには、ベースバンド処理能力を大幅に向上させてアンテナ素子間の位相差の計算に使用する行列演算を行う必要があります。
空間密度
アグリゲーションとMIMOは、提供された帯域幅だけでなく、郊外の近郊やオフィスビルのフロアなど、与えられた空間に詰め込む伝送レートを大幅に上げる能力というもう1つの主なウィッシュリスト項目に対処します。しかし、密度が上がるにつれて別の問題が発生します。
Maiden氏は「エリアを小型セルで埋めるだけであれば簡単に見えますが、常にそれで改善されるわけではありません。ほとんどのネットワークに干渉という制約があります」と述べています。
小型セルの密度が上がるにつれて、それらが互いに干渉しないようにすることと、マクロネットワークがネットワーク管理上の重要な問題になります。チャネル割り当てとビーム形成が重要なツールになります。
「しかし、ビームを形成するには追跡する必要があります。ネットワークは、何らかの方法でユーザーの物理的な位置を追跡してそのセルを調整する必要があります。そうしないと、あまりにも多くのハンドオーバー・イベントが発生するため、新しい基地局がビームを狭くして新しいクライアントに向ける前にそれを見失う可能性があります」(Maiden氏)
ネットワークで多くの追跡、モニタリング、割り当て、最適化が行われているのは明らかです。ですが、これらはどこで行われているのでしょうか。全体の集中化(図3)を唱える流派があります。全てのベースバンド処理を仮想化し、コントロールプレーンコードおよびアプリとともに大都市圏のデータセンターに移します。デジタル化した波形を専用ファイバー回線上で無線ヘッドとデータセンターの間を往復させます。これはC-RAN(Centralized Radio Access Network)と呼ばれます。
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