WoT(Web of Things)と化すIoTに待ち受ける、分断された未来:SYSTEM DESIGN JOURNAL(1/5 ページ)
さまざまな企業や勢力がIoTを目指していますが、残念ながら勢力ごとの対話はほぼ存在していません。Web技術を共通言語とし、IoTを「WoT(Web of Things)」とすることで妥協点を見いだそうという動きはありますが、成功するかは不透明と言わざるを得ません。
収益の匂いに引かれて、大きな勢力がIoT(モノのインターネット)に集まってきています。サプライチェーンの上流からは、半導体企業がモノ向けの小型マイクロコントローラーユニット(MCU)、ハブ向けのエネルギー効率に優れたSoC、クラウド・データ・センター向けの強力なアクセラレータ、IoTの基礎をなす無数のハードウェア部品を動かしています。
反対側からは、エンタープライズIT業界の巨人が、膨大な数のモノからのデータを融合し、応答を構築し、実行を指令するためのクラウドアプリケーションを開発できるフレームワークづくりを進めています。そして、その中間においては、ネットワーク業界の勢力が、これらの新しい非対称ネットワークを理解し、クラウド、ハブ、エンドポイントと関連付けようと必死に努力しています。
残念ながら、これらの勢力間には対話がありません。
その結果、システム開発者は、全く異なる異なる技術、語彙(ごい)、前提、さらにはIoTのビジョンが絡み合う状況に直面しています。「だからこそ手付かずの大きな機会があるということです」と熱く語るのは、ハードウェア・インキュベーターのLemnosLabs社パートナーであるEricKlein氏です。しかし、IoTを応用したいアプリケーションを本業とする開発者が領域を超えて取り組もうとしても、「各領域の専門家向けのツールを使用せざる得ないため作業が滞ります」とKlein氏は嘆きます。
ARMの最高技術責任者(CTO)Mike Muller氏は、最近のARM TechConの基調講演で、そうした課題の1つとしてセキュリティの例を示しました。「課題について、エンジニアの観点から想像すべきです。IoTは、セキュリティ未経験の組み込み設計者に対し、1ドルのMCUをインターネットのあらゆる脅威から防御することを求めているのです」(Muller氏)
「IoTアプリケーション開発は、アプリケーションアルゴリズム、エンベデッドシステムとハードウェア、短距離パケット無線、インターネットプロトコル、エンタープライズIT環境と全てをマスターした博識家にのみ任せるべき」などという人はいません。
そのため、これら領域のベンダーは、主にアプリケーション専門家であるエンジニアに向けて単一の開発環境を構築するため、自社プラットフォームを拡張しています。IoTのあるべき姿についての認識を共有していないにもかかわらず、それらのプラットフォームは技術的にはかなり信じ難い発想に収束しつつあるようです。それはワールド・ワイド・ウェブ(World Wide Web)です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「SoC」or「SoC」?統合へのさまざまな道
1つのダイに複数機能を実装するSoC(System on Chip)化の波は高まるばかりです。アーキテクトはダイ間接続とマルチダイパッケージングの動向に注意を払い、コストや消費電力、将来性までも視野に入れた選択をしなければなりません。 - 組み込みコンピューティングに向けた、ハードウェアアクセラレーションの選択肢
組み込みコンピューティングを加速させるハードウェア・アーキテクチャとは何でしょうか。DSP?GPU?それともメニーコアでしょうか。どのアプローチが最も適するのかを考察します。 - FinFET革命がコンピュータアーキテクチャを変える
FinFETの登場により、ムーアの法則はまだ継続される見通しです。ですが、それで全てが解決するわけではありません。FinFETの登場が、大きなSoCを自律的な機能ブロックに分割するという方向に導く結果となるでしょう。 - サブシステムIPがチップの境界を越える
サブシステム規模のIP(サブシステムIP)はSoCはもちろん、FPGAにまでも影響を与えています。素晴らしい取り組みですが、さまざまな注意点も存在します。スムーズな実装を行うための4つの注意点について述べます。 - 畳み込みニューラルネットワークの使い方、分かりますか?
畳み込みニューラルネットワークとは何でしょうか。学問の世界から現実の世界に登場しつつあるこれは、さまざまな組み込みシステムに利用される可能性が高く、大いに関心を持つべきです。