組み込みコンピューティングに向けた、ハードウェアアクセラレーションの選択肢:SYSTEM DESIGN JOURNAL(1/6 ページ)
組み込みコンピューティングを加速させるハードウェア・アーキテクチャとは何でしょうか。DSP?GPU?それともメニーコアでしょうか。どのアプローチが最も適するのかを考察します。
2015年のHot Chips(マイクロプロセッサ関係の学会)では、シリコンアーキテクチャに対する最も優れた現代的な考え方が幾つか示されました。今回のトピックは、ウェアラブルからスーパーコンピュータまで多岐にわたりましたが、近未来のエンベデッド・コンピューティングに対する戦略について述べた論文は全体の一握りでした。
マイクロコントローラーへ強い関心を示す市場の動向を占うのに、なぜ意欲的な大型チップに目を向けることになるのでしょうか。これには2つの理由が思い浮かびます。1つはエンベデッドシステム仮想化の成長です。専用ハードウェアからクラウドに移行するタスクが増えるに従って、サーバプロセッサや付随するハードウェアアクセラレータのアーキテクトは、エンベデッドシステムの世界に向き合う必要に迫られています。
もう1つはエンベデッドアプリケーション自体の進化です。マシンビジョンやその他のロボットアルゴリズムの普及、フィードバックループ内で直接測定を補強するための状態推定器、カルマンフィルターや類似技術の普及、計算された実行可能システムモデルのループ内使用、機械学習アルゴリズムの探索は、いずれも新たな高負荷なコンピューティングタスクを生み出しており、それは身近なエンベデッドアプリケーションにも及んでいます。これらのタスクは、多くのデザインではマルチコアSoCの能力をも上回る恐れがあります。
アクセラレータの分類
こうした変化を背景にHot Chipsで発表された論文では、アーキテクチャアプローチによってそれぞれ表される一連の選択的未来が描かれていました。その中で恐らく最も古いのは、Qualcommによる最新の実装で示されたベクトルDSPアクセラレータでしょう。
一方ではFPGAもあり、Altera(R)とXilinxは最先端ジオメトリにおけるプログラマブルロジックについて同じ考え方を共有しています。GPUは商用版もあれば、オープンソース版もありました。さらに、大きな議論を呼んだ巨大なXeon Phiの第2世代をインテルが発表し、ホモジニアスメニーコアアレイも勢いを増しているようです。
また、メニーコアベンダーのKalrayによる率直な考察や、Microsoftの研究チームによる成果の集計など、特定用途におけるアーキテクチャの選択肢の相対的メリットを比較した論文もありました。
どれをどのような場合に使用するか
Kalrayの最高技術責任者(CTO)Benoit Dupont de Dinechin氏は、自社の最新メニーコアプロセッサに関する論文の冒頭で、現代の設計者に与えられている選択肢について簡単に紹介しています。
その中で、FPGAはビットレベルの演算において優れており、低レイテンシで決定性の性能を提供できると述べています。しかし、プログラミングモデルには通常、VerilogなどRTL(レジスタ転送レベル)ハードウェア記述言語が必要です。DSPコアは、整理されたデータのストリームに対する固定小数点の繰り返し算術演算を得意としていますが、その効率を達成するにはエキスパートが慎重にコーディングする必要があります。
それに比べて、GPUはメモリアクセスパターンが密であるために規則的な計算が最も得意であるとde Dinechin氏は述べています。しかし、そのアーキテクチャのためリアルタイム計算には不向きです。当然ながら、de Dinechin氏の分類では、メニーコアアーキテクチャ固有の優位性よりむしろ根本的な単純性から、リアルタイム計算に対して単純な汎用CPUコアの大規模アレイを支持しています。
「現代のリアルタイムシステムは要求が非常に厳しく、決定性、予測可能性、構成可能性が求められています。また、機能安全の要求から、静的解析によって証明可能でなければなりません」とde Dinechin氏は述べています。
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