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モノのインターネットを再考するSYSTEM DESIGN JOURNAL(1/5 ページ)

IoTがその現実性について語られるようになった2015年、その基本概念を再考する機運が高まっています。「センサー」「仮想化」「フォグ」などの観点から、IoTを再考してみましょう。

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 モノのインターネット(Internet of Things:IoT)が2015年の必須事項の1つとしてその地位を確立するにつれ、その基本概念に注目するシステム・アーキテクトが増加しています。

 その中で、専門家はIoTの構造(単純な低機能ワイヤレスハブに接続され、インターネットを介して大規模なクラウド・データセンターにリンクされた、センサーとアクチュエータのクラウド)に対する単純な見方について、厳しい質問を投げかけています。この説明で述べるほとんど全てのステージが問題となりえるからです。

 一部の専門家は、多くの単純なセンサーがシステムの状態を測定するうえで適切な方法であるという考え方にそもそも異議を唱えています。また、データ処理機能を持たない安価なハブを使用するという考えに疑問を持つ人もいます。ネットワーク・アーキテクトは、IoTの全体像の中で従来のインターネット・スイッチ、あるいはインターネットプロトコルそのものが果たす役割について尋ねています。さらに、データセンター・アーキテクトは、検討中の概念(仮想化とアプリケーション固有のデータセンターの両方)にIoTが与える影響について詳しく調べています。

 私たちはまだ理解を共有していません。しかし、これらの疑問から得られる答えは、センシング・テクノロジー、ハードウェアに至るデータセンターの構造、インターネットさえも大きく変える可能性があります。

センシングの問題点

 センサーに関する疑問から始めましょう。

 システム状態を測定するための明快な方法は、状態変数を特定してそれが顕在化して測定できるポイントを見つけ出し、センサーを配置することです。次に、ハブでセンサーの一連のデータを取り出します。しかし、明快な方法が最良の方法とは限りません。そのようなアプローチを行う全てのセンサーとリンクは設置コストが高く、本質的に信頼度は低くなります。

 もう1つの方法は、遠隔から得られる少数の重要な変数を選択して使用し、システム全体の状態を推定することです。このプロセスは直感的に明白であるか、あるいは何らかの本格的な数学とカルマン・フィルタなどの状態推定方式の関係する可能性があります。さらに直感的な側面の一例には、防犯カメラ、交通、駐車、スマートシティの考え方が関係します。

 代表的なスマートシティのシナリオには通常、照明管理、駐車管理、交通制御、セキュリティが関係します。従来のIoTアプローチでは、光センサーを各街路灯の上、埋め込み型近接センサーを各交差点と各駐車スペースの近くの車線、防犯カメラを戦略的な場所の地表面から十分に高いところにそれぞれ設置します。

 これらセンサーはそれぞれのハブに有線で接続され、その後はインターネットのアクセスポイントまで無線で接続されます。ただし、光センサーは街灯柱の先端からハブまで無線接続を使用します。この設置コストだけでも、ほとんどの地方自治体が試行さえためらう金額となります。また、埋め込み型センサー、長い埋設ケーブル、全ての無線機器の継続的なメンテナンスコストは高額になる可能性があります。

 これには別の方法があります。インテリジェントな観察者が少数の防犯カメラの映像を見れば、どの街路灯が点灯していたか、どの駐車スペースが駐車されていたか、信号機をいつ変えるべきかが容易に分かります。そのため、Eutecusの映像分析アルゴリズムを使用するSensitySystemsのようなシステムベンダーは、少数の高解像度カメラをその他の一群のセンサー、ハブ、ワイヤレス接続の代わりに使用してきました。その結果、資産保有の総コストが著しく節約されただけでなく、多くの単純なセンサー設置では実現できなかった信頼性の向上、付加的な安全およびセキュリティ機能が得られました(図1)。

図 1. スマートシティアプリケーションでは、多くの単純なセンサーよりも多くのデータ、より高い信頼性を1台のカメラから得られる可能性があります
図 1. スマートシティアプリケーションでは、多くの単純なセンサーよりも多くのデータ、より高い信頼性を1台のカメラから得られる可能性があります

 同様の考え方が、他のシステムでも有効な場合があります。システムの計算可能な数学モデルを使用する状態推定方式では、容易にアクセスできるモーター巻線の電流と電圧からモーター軸の位置を計算したり、外部的観察から化学反応の状態を計算したりできます。一般に、供給電力、接続性、信頼性、セキュリティの問題を持つ多くの単純なセンサーよりも、計算リソースによってサポートされる少数のリモート・センサー(多くの場合はカメラ)の方が好まれる傾向が強まっています。

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