骨形成に関わるタンパク質「Sp7/osterix」の新しい遺伝子制御メカニズムを解明:医療技術ニュース
東京大学は、骨形成において遺伝子発現のスイッチとして働くタンパク質「Sp7/osterix」について、ゲノムの全領域にわたって調査した。その結果、従来の様式とは異なる、新たな遺伝子制御メカニズムを発見した。
東京大学は2016年5月10日、骨形成において、遺伝子発現のスイッチとして働くタンパク質「Sp7/osterix」の新しい遺伝子制御メカニズムを解明したと発表した。同大学大学院工学系研究科の大庭伸介特任准教授らの共同研究グループによるもので、成果は同月9日に米科学誌「Developmental Cell」で発表された。
ヒトの骨は、骨芽細胞という細胞によって作られている。骨の形成には、遺伝子発現のスイッチとして働くSp7/osterixが正常に機能し、骨芽細胞の形成に関わる遺伝子を正しく発現させることが必要だ。従来の研究で、Sp7/osterixの遺伝子発現制御機構は一部のゲノム領域で明らかになっていたが、全領域でどのように機能するかは不明だった。
共同研究グループは、Sp7/osterixによる遺伝子発現制御の様子を骨芽細胞のゲノム全域にわたって調査した。その結果、Sp7/oosterixが別のタンパク質と結合し、間接的にゲノム領域に作用する機構が存在することを明らかにした。これは、Sp7/oosterixが直接特定のゲノム領域に結合し、遺伝子発現を制御するという従来の様式とは異なるものとなる。
さらに、Sp7/osterixタンパク質と今回新たに発見した機構が、脊椎動物に特徴的であること、進化の過程で骨芽細胞が現れたことに伴って獲得された機構であることも示した。
これらの知見は、Sp7/osterixの作動様式とその進化学的な意義を提唱するものとなる。今後は、ゲノム変異がもたらす骨格系の変性疾患・先天疾患の理解、それらの治療、骨格再生におけるゲノム創薬への貢献が期待されるという。
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