チェス、オセロ、クイズの次は「東大」だ!! ――NII「人工頭脳プロジェクト」始動:2021年に東京大学“合格”を目指す
国立情報学研究所の人工頭脳プロジェクトは「ロボットは東大に入れるか」というグランドチャレンジに向け始動。2016年までに大学入試センター試験で高得点をマーク、2021年に東京大学入試を突破を目指す。
国立情報学研究所(以下、NII)は2011年12月14日、「人工頭脳プロジェクト」キックオフシンポジウムを開催した。
NIIが中心となり発足した同プロジェクトは、1980年以降、細分化された人工知能の研究・技術を再統合することで新たな道を切り開くことを目的としている。今回のキックオフシンポジウムは、日本の学際的な知識・先端技術を集積し、かつ国際連携を視野に入れた研究活動を開始すべく開催された。
「細分化された人工知能の研究・技術を再統合する」といっても、このプロジェクトで一体何を研究するのか。その研究テーマとして今回掲げられたのは何と「ロボットは東大に入れるか」だ。
非常にユニークな挑戦にも思えるが、過去、人工知能の分野では、チェス、オセロ、将棋、サッカー、クイズなどを題材に人間に挑戦する「グランドチャレンジ(注)」が行われてきた。最初は人間に“挑戦する立場”であった人工知能も、今ではこうした分野で人間に勝利するまでに発展を遂げている。ご存じの方も多いと思うが、IBMのスーパーコンピュータ「Watson」が米国のクイズ番組でクイズ王に勝利したことは有名な話だ(関連記事)。
当然ながらこの挑戦では、実際に試験会場にロボットが赴いて、他の受験生と一緒に試験を受けるわけではない。同じ試験問題、同じ制限時間内でどれだけ正解を導き出せるかを問う。
なぜ、この“東京大学入試の突破”が同プロジェクトのグランドチャレンジとして適切なのか。
NIIの新井紀子氏は、まず試験を構成する要素が「テキスト」「画像」「音声」の3つである点を理由に挙げる。さらに、「国内の試験問題は誤読が生じないように非常によくコントロールされた模範的な日本語で記述されており、どんな問題でも必ず正解がある。また、これまで蓄積された大量の情報(過去の試験問題)がある」とし、人工知能研究の視点から眺めた際に「研究素材として、これ以上に興味深いものはない」と語る。
また、基調講演に登壇した公立はこだて未来大学 松原仁教授は「日本では『東京大学』が知性の象徴の1つであると認識されている。また、京都大学の入試問題よりも“素直”な問題が比較的多く出題される点がコンピュータに向いている。大学入試はクイズに挑戦するよりも難易度が高く目標として最適である」と話していた。
同プロジェクトの具体的なベンチマークとして、2016年までに大学入試センター試験で高得点をマークすること、また2021年に東京大学入試を突破することが目標として掲げられている。「最終的には、『優秀さ』はプログラミング可能か? という課題に対する応えを導き出すことにつながるだろう」と新井氏はいう。
ロボット/ロボット開発 コーナー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.