自動車の“突然変異”に日系自動車メーカーはどう立ち向かえばいいのか:和田憲一郎の電動化新時代!(21)(3/3 ページ)
欧米で電気自動車、プラグインハイブリッド車の話題が相次いでいる。また中国では2015年に33万台を超える電気自動車やプラグインハイブリッド車など新エネルギー車が販売され、世界のトップに躍り出た。しかし、日系自動車メーカーの動きは鈍いように思える。今、われわれはどこに立っているのか、また今後どのように考え、どうすべきなのか。
自動車に突然変異の可能性
自動車が、これまでにない多くの要素、つまりクルマがクルマでない要素を持たなければならないのであれば、そのような新しい環境に適応することが求められる。このように考えると、現在の自動車が置かれた立ち位置は、環境が激変し、まさに突然変異を求めるような状況になっていないだろうか。
つまり、現在の立ち位置は、まさに自動車誕生130年目にして初めての大きな分岐点となる、変革期に立っているように見受ける。自動車が突然変異を起こすのであれば、これからの自動車は以下に示すような新たな自動車として生まれ変わる可能がある。
- ドライバー不在のクルマ
- 端末にタイヤを装着したようなクルマ
- 個人でなく、共用を前提としたパーソナルコミューター
- 地上ではなく、地下、上空を移動するクルマ など
もちろん、多くの変異説が生まれるであろうが、上述のごとく、生存に向いていない突然変異は自然淘汰されるであろう。そして、大切なことは、例えこのような話をしても、多くの自動車関係者はこれまで通りの延長上にビジネスがあると思っている。そして、気が付いた時は、突然変異したものが主流となり、取り残されてしまう。
今回のポイントとして、われわれは大きな分岐点となる変革期に立っていることを説いた。それを認識するため、筆者は自動車にとって大きく重要な分岐点となる変革期が起きることを“自動車突然変異論”と名付けたい。
われわれはどうすべきなのか
今回の筆者の意見はかなりとっぴなものと映るかもしれない。しかし、現在のように方向性を見失い、行き詰った状態では、いつ何時、どのようにでも突然変異が起こる可能性があると考えている。冒頭に、企画関係者の話として、「今後何をどうして良いのか分からない」とのコメントを紹介したが、もし自動車突然変異を前提とするならば、これは「不安」ではなく「オポチュニティ」へと変わる。人間は何か正体の知れないことが最も怖いのである。
P.F.ドラッカーは、「変化はコントロールできない。できるのは、その先頭に立つことだけである」と説いている。乱気流の時代、変化は常態であることを前提に考えることが大切であろう。
ここまで読んでくると、では答えはあるのかと問われることだろう。しかし、現時点では分からないとしか言えない。なぜなら既に現在進行中の現象もあれば、これから10〜20年の間に起きることもあるからである
ただ1ついえることは、これまでの延長線上に自動車がこれからも存在する可能性は少ないのではないかということである。大きな変革の波が押し寄せてきており、自動車も変わらざるを得ない状況に追い込まれているように見受けられる。
問題はわれわれがどう立ち向かうかであろう。突然変異というイノベーションに対し、どう対応するかは、必ずしもシリコンバレーの特権ではない。近未来に自動車突然変異が起こることを前提に、不安でなく、オポチュニティとして、どのようなことが起こるかを考え、先回りして準備することはできる。
よく言われるように、人間と動物の違いの1つとして、人間が時間/空間を越えて形而上的に考えられる点が挙げられる。自動車も人間が作りだしたものであり、“自動車突然変異”も人間が創りだすのであろう。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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