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自動車の“突然変異”に日系自動車メーカーはどう立ち向かえばいいのか和田憲一郎の電動化新時代!(21)(2/3 ページ)

欧米で電気自動車、プラグインハイブリッド車の話題が相次いでいる。また中国では2015年に33万台を超える電気自動車やプラグインハイブリッド車など新エネルギー車が販売され、世界のトップに躍り出た。しかし、日系自動車メーカーの動きは鈍いように思える。今、われわれはどこに立っているのか、また今後どのように考え、どうすべきなのか。

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今、われわれはどこに立っているか

 将来の自動車産業を考える時、全体を見る立場の人は、直近の仕事のみならず、少し視野を広げて全体を俯瞰してみることも大切であろう。

 そして、「もし今、われわれはどこに立っているのか」との問いがあるとすれば、筆者の見立てでは、自動車誕生以来の大きな分岐点となる変革期に立っている。その背景を少し説明しよう。

 自動車の歴史は、初期ガソリン車である1885年のベンツから始まり、130年余の歴史がある。また、1908年にはフォードT型が発売され、大量生産により一気に普及が拡大した。現在の年間自動車生産台数は、2015年で約9000万台にまで達している。

 では何が問題なのかと言えば、ここ数年来これまでの自動車の定義や範囲では捉えられない多彩な要求が自動車に求められていることである。何か違うステージに来た感がある。一部ではあるが、ある意味、下記の要求は「クルマがクルマでなくなる」要素を秘めている。

  • 自動車に求められる要素が拡大
    • AI機能(シンギュラリティ)の発展と、クルマの支配化
    • IoT進化による外部との常時接続
    • 価値観の変化(所有から共用へ。所有者の減少)
    • 超多忙化に伴い、運転時間がもったいない世代の増加
    • 少子高齢化により運転を敬遠する世代が増加
    • 人口都市集中による交通渋滞の慢性化と、環境悪化による自動車離れ
自動車の範囲に収まらない多彩な要求が突きつけられている
自動車の範囲に収まらない多彩な要求が突きつけられている (クリックして拡大)

突然変異とは

 このように、クルマがクルマでなくなる、つまり本来持っていた機能が著しく変化する例は他にあるのであろうか。工業製品で言えば、銀塩カメラからデジタルカメラへ、固定電話から携帯電話への移行などがある。これらの製品は技術の進化に伴って、旧来品から新型へと移行したように見受ける。

 しかし、自動車の場合、銀塩カメラがデジタルカメラに移行したような単一方向の進化ではなく、さまざまな方向に拡散して変化しつつあるのではないだろうか。その意味で自動車の変化はとらえにくく、自然界、特に動植物の変化に近いのではと思われる。

 さて、話は少し変わるが、「突然変異」をご存じだろうか。名前を聞いたことがあると思うが、これはオランダの生物学者 ユーゴー・ド・フリースが、1901年にオオマツヨイグサの研究から新種が突然生まれることを発見し、それを突然変異と名付けたことに由来する。まさにこれまでの母集団とは異なる形質が突然生まれたことを意味する。現在ではDNAの中にある、生命設計図であるゲノムに書き換えが起こることから生じることが分かってきている。

 突然変異が起こる理由として、フリースは環境の変化に適応するためであると説いている。つまり突然変異することで、生存力が高まり、生き残る可能性が出てくることから、動植物は突然変異を繰り返しているのであると。

 しかし、突然変異であっても、必ずしも生き残ることができるとは限らない。突然変異は3つに分類することができるといわれている。

  1. 有利な変異(生存に有利な変異であり、生き残ることができる)
  2. 不利な変異(この場合は、自然淘汰される)
  3. 有利でも不利でもない変異(中立であるがために生き残る可能性が高い)
突然変異は、生存力を高めて生き残る可能性を引き上げる。自動車にも突然変異が起こる?
突然変異は、生存力を高め、生き残る可能性を引き上げる。自動車にも突然変異が起こる? (クリックして拡大)

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