ようやく見えてきた、車載ソーラーパネル採用の兆し:和田憲一郎の電動化新時代!(22)(1/4 ページ)
これまで自動車メーカーは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)にソーラーパネルの搭載を検討してきたが、なかなか実現できなかった。その主な理由は、太陽光発電による実走行距離が短く、費用対効果の面からも採用が困難だったからである。また技術的にも課題があった。しかし、ここにきて採用に向けた兆しが見えてきた。
電気自動車(EV)が第3世代として出現し始めた2009〜2010年、三菱自動車の「i-MiEV」や日産自動車「リーフ」が市場投入された。この時、多くの方々から「ルーフにソーラーパネルを装着しては」という提案があった。
その理由としては、当時はEVの一充電あたりの走行距離が短かったため、ソーラーパネルを搭載することで走行距離を少しでも伸ばせるのではないかと思われたからである。こうしたニーズの背景からクルマとソーラーパネルの関係を振り返っていく。
ソーラーパネルをクルマに装着できなかった理由
当時、ソーラーパネルを搭載する軽キャブワゴンで全国行脚する番組などがテレビで放映されていたのが影響したのか、ユーザーからソーラーパネル搭載の要望は多かった。しかし、期待とは裏腹に、実際にアイデアを実現するには多くの課題が横たわっていた。当時、筆者が携わっていたi-MiEVでもそうだったが、実現を阻んでいた主な課題は次の通りである。
第一に、ルーフの有効面積がソーラーカーほど大きくない(i-MiEVで約0.8m2)ことが挙げられる。さらに、当時の主流だった多結晶パネルのセル変換効率は15%前後と高くないため、車載ソーラーパネルの出力は100W程度にとどまっていた。これは家庭用ソーラーパネルの出力3〜5kWと比べてあまりにも小さく、丸一日放置して発電したとしても走行できる距離はモード燃費で約3km、実際は約2kmレベルにすぎない。さらに、車載ソーラーパネルから再度充電するには数時間待たなければならず、走行距離に対する即効性がなかった。
第二に、この頃はEVがようやく開発された段階であり、車載ソーラーパネルと駆動用バッテリーを連結するシステム(家庭用ソーラーパネルのパワコンのような存在)の技術開発があまり進んでいなかった。また、その安全性についても業界基準がなかった。
これらの課題に加えて、クルマのルーフは3次元曲線のため、これに沿う変換効率の優れたソーラーパネルを製造することが困難だった。ソーラーパネルの装着は車両購入時のオプションの位置付けにあり、台数が限定されることから、走行距離に対する費用対効果を出すことも難しかった。
車載ソーラーパネルは複数の企業で検討されたとは思うが、こうした課題があり、結果として採用に至っていない。
i−MiEVやリーフが発売されたのと同じ時期、2009年にトヨタ自動車のハイブリッド車、3代目「プリウス」で「ソーラーベンチレーションシステム」が採用された。これは、ルーフに配したソーラーパネルで発電し、その電力により車内の換気を行うものである。例えば、炎天下での駐車中に作動させることにより、車内の気温の上昇を抑えることが可能となる。
しかし、発電した電力を使うのはファンの作動であり、駆動用バッテリーへの充電は見送られた。
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