ようやく見えてきた、車載ソーラーパネル採用の兆し:和田憲一郎の電動化新時代!(22)(2/4 ページ)
これまで自動車メーカーは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)にソーラーパネルの搭載を検討してきたが、なかなか実現できなかった。その主な理由は、太陽光発電による実走行距離が短く、費用対効果の面からも採用が困難だったからである。また技術的にも課題があった。しかし、ここにきて採用に向けた兆しが見えてきた。
3代目プリウスから一転、駆動用バッテリーを充電可能なシステムが登場
ところが、ここにきて自動車メーカーから車載ソーラーパネルを採用する兆しが見えている。2016年冬に発売予定のプラグインハイブリッド車(PHEV)「プリウスPHV」の新モデルでは、いよいよ駆動用バッテリーに充電可能な「ソーラー充電システム」を搭載する。
ソーラー充電システムは3つの部品から構成されている。最大出力180Wのソーラールーフと、ソーラールーフで発電した電力を蓄電するニッケル水素バッテリー、さらに、DC/DCコンバータを内蔵し電力供給のマネジメントを行うソーラーECUである。ソーラー充電システムの効果としては、「天気の良い日に車両を1日外で充電した場合、走行可能距離は最大でも約5km。年間で平均しても1日当たり2.7kmを見込んでいる」(トヨタ自動車)ようだ。
しかし、よくよく考えてみると、プリウスPHVはPHEVである。たとえ駆動用バッテリーの電池がなくなったとしても、エンジンで走行可能である。EVであればラスト1マイルといわれるように、最後に少しでも航続距離を伸ばすことで、ユーザーにメリットを訴求できるが、PHEVとなるとそこまでの必然性は薄い。
トヨタ自動車は、そのような環境の中でもプリウスPHVに採用した。推測するに、自動車業界にとって前々からのアイデアである、「車載ソーラーパネルから駆動バッテリーへの電力供給」をどうしても実現したかったのではないだろうか。このため、他社に先駆けて車載ソーラーパネル、蓄電用ニッケル水素バッテリー、ならびにソーラーECUなどのシステム開発を行った。
多くの技術的課題、費用対効果などの経営的課題も乗り越えて、今回世界で初めて市場投入となったことに敬意を表したい。
中国でも車載ソーラーパネルの採用に動きがみられる。太陽光発電の設備を手掛けるHanergy Holding Groupが、2016年7月にプロトタイプではあるが、本格的なソーラーパワーEVを発表した。
報道によれば、5〜6時間の太陽光発電で8〜10kWhのエネルギーを生成し、80kmを走行可能とのこと。現在、日本国内の家庭用ソーラーパネルで高効率と呼ばれる製品は20%前後なのに対し、Hanergy Holding Groupが採用するソーラーパネルの変換効率は31.6%のようだ。同社の高い変換効率のソーラーパネルと、従来のEVなどを組み合わせる計画とのこと。詳細は公表されていないが、実用化が楽しみである。
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