検索
連載

ようやく見えてきた、車載ソーラーパネル採用の兆し和田憲一郎の電動化新時代!(22)(3/4 ページ)

これまで自動車メーカーは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)にソーラーパネルの搭載を検討してきたが、なかなか実現できなかった。その主な理由は、太陽光発電による実走行距離が短く、費用対効果の面からも採用が困難だったからである。また技術的にも課題があった。しかし、ここにきて採用に向けた兆しが見えてきた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

なぜ今、車載ソーラーパネルなのか

 それでは、なぜ今、車載ソーラーパネルが普及の兆しを見せているのであろうか。EV、PHEVの新たな機能として見直しされていることは間違いない。しかし、先述した課題が年々改善されていることも理由と思われる。

 まずはソーラーパネルの変換効率が向上してきたのが大きい。これまで太陽電池に主に採用されてきたのは結晶系で、セルの変換効率は15〜20%程度であった。最近では技術革新が進み、変換効率は高いもので25%まで向上している。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2025年にセルの変換効率を30%まで改善する目標を掲げている。これ以外でもCIS系のセルで25%、また化合物系では実験段階であるがセル変換効率45%レベルまで達している。

太陽電池の材料ごとに、セル/モジュールの変換効率の改善目標が立てられている
太陽電池の材料ごとに、セル/モジュールの変換効率の改善目標が立てられている (クリックして拡大) 出典:新エネルギー・産業技術総合開発機構

 車載用を前提とした対応も進んできた。例えば、自動車には家庭用ソーラーパネルのパワコンに相当する機能部品がないことから、プリウスPHVのようにDC-DCコンバータを内蔵するソーラーECU、いったん電力をためるソーラーバッテリーなど蓄電技術が開発されている。また、ソーラーパネル自体もルーフの曲面にもフィットするフレキシブルタイプが出てきた。ソーラーパネルの生産量拡大に伴い、コストも低下していく。

将来性は現時点で判断できない

 このように、車載ソーラーパネル採用の兆しがあるものの、走行距離に対する効果を問えば、かなり限定的と言わざるを得ない。理由として、ソーラーパネルの技術革新が進むと同様に、駆動用バッテリーの進化も進んできたからである。

 EVについて言えば、2010年代の一充電あたりの走行距離が150〜200kmであるのに比べ、2017年以降に市場投入される予定のEVは、Tesla Motors(テスラ)の「モデル3」が345km(目標値)、General Motors(GM)の「シボレーBOLT」が320km、というように走行距離300km以上が1つの目標となっている。もしそうであれば、車載ソーラーパネルによって走行距離が3km増えたとしても、その効果は走行距離全体に占める1%にすぎない。

 このため、車載ソーラーパネルの将来性は、もう少し長い目で見る必要があるのではないだろうか。NEDOが2025年をめどにセル発電効率50%に引き上げる目標を掲げており、このレベルにまでなれば発電量も多くなり使い勝手が良くなると思われる。

 また、自動車メーカーは、ソーラーパネル搭載車両の販売地域も考慮する必要があろう。例えば、東京の全天日射量は年平均で約12MJ/m2レベルであるが、シンガポールやタイなどの東南アジア諸国では17〜18MJ/m2である。地域によって発電量に大きな差があり、車載ソーラーパネルをどの地域で設定するかも検討の余地があろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る