ようやく見えてきた、車載ソーラーパネル採用の兆し:和田憲一郎の電動化新時代!(22)(4/4 ページ)
これまで自動車メーカーは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)にソーラーパネルの搭載を検討してきたが、なかなか実現できなかった。その主な理由は、太陽光発電による実走行距離が短く、費用対効果の面からも採用が困難だったからである。また技術的にも課題があった。しかし、ここにきて採用に向けた兆しが見えてきた。
エネルギーマネジメントから見た可能性
車載ソーラーパネルの可能性は、ファンモーターを駆動する12Vバッテリーや、駆動用バッテリーへの充電が想定されてきた。しかし、エネルギーマネジメントの観点では、全く異なる見かたがあるように思える。つまり「ソーラーパネルを備えた走るエネルギーデバイス」としての側面である。
ジャストアイデアであり、法整備や認証などの制度設計や機器開発が必要となるが、もし車載ソーラーパネルの出力が1kWのように充実してくると、家庭用ソーラーパネルと補完することが可能となると思われる。以下にそのシステム構成を示す。
- 基本は車載ソーラーパネルからEV駆動用バッテリーへ充電を行う
- 自宅で駐車中、車載ソーラーパネルは、V2H(Vehicle to Home)パワコンや家庭用パワコンを経由して外部への売電も可能となる。つまり、ソーラーパネルを搭載しているEVがあれば、家庭用と車載用、両方の太陽光発電からダブル給電が可能となる。
- 停電などの非常時においては、駆動用バッテリーのみならず、車載ソーラーパネルからも家庭に電力を供給したり、蓄電池に電力を蓄えたりすることができる。このことは、平常時/非常時の電源供給ルートを多様化させ、安定的に住宅に電気を供給することが可能となる。
これから見るように、これまで住宅が太陽光発電や蓄電池を備えるのに対し、クルマは駆動用バッテリーのみであったが、車載ソーラーパネルを持つことで2つのソーラーパネルと2つの蓄電池により、多様な使い方が提案できる。これまでのV2Hに対して2通りのV2H機能を有する、いわゆる「Dual V2H」ともいえるのではないだろうか。
車載ソーラーパネルはまだ発展途上
全体を通して感じたのは、車載ソーラーパネルは変換効率1つとっても、多様な技術や工法が開発されつつあり、まさに発展途上だということだ。駆動用バッテリーと同様に相当の時間をかけながら伸展していくのであろう。それに伴って、車載ソーラーパネルによる走行距離も次第に伸びていくことが予想される。
また、エネルギーマネジメントの観点からは、太陽光発電機能を備えた走るエネルギーデバイスとして、多様な提案がなされるであろう。今後、多くの電動車両にソーラーパネルが搭載され、平常時/非常時における、エネルギーのリスクマネジメントの一つとして検討されることを期待したい。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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