新型「プリウスPHV」は先代の反省を生かす、「なるべくエンジンを使わない」:電気自動車(1/2 ページ)
「プラグインハイブリッド車なのに、なぜすぐにエンジンがかかってしまうんだ」。2012年に発売したトヨタ自動車のプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」には、このような不満が寄せられていた。2016年冬に発売する新型プリウスPHVは、プラグインハイブリッド車が持つ電気自動車としての側面を追求し、なるべくエンジンを使わないことを目指した。
「プラグインハイブリッド車なのに、なぜすぐにエンジンがかかってしまうんだ」。2012年に発売したトヨタ自動車のプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」には、このような不満が寄せられていた。暖房を使用する時や、モーターのみで駆動するEV走行ではカバーしきれない速度域に達した時などにエンジンが始動してしまい、エンジンをほとんど使わないことを望むユーザーの期待に応えられていなかった。
2016年冬に発売する新型プリウスPHVは、プラグインハイブリッド車が持つ電気自動車としての側面を追求し、なるべくエンジンを使わないことを目指した。
先代プリウスPHVに対する不満
新型プリウスPHVの開発は、先代モデルの不満解消に焦点を当てたという。トヨタ自動車 Mid-size Vehicle Company MS 製品企画 ZF チーフエンジニアの豊島浩二氏は「家庭用コンセントからのAC100Vでの充電に対応していないこと、暖房を使うとエンジンがかかること、ハイブリッド車である『プリウス』とプリウスPHVの見た目や機能の違いが分かりにくいことなどについて、ユーザーから(不満の)声が上がっていた」と振り返る。
これを受けて、デザイン面でプリウスとプリウスPHVの違いを明確にするとともに、プラグインハイブリッド車が持つ電気自動車らしさを追求した。ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車を差別化する上で課題となっていたのは、EV走行が可能な距離と、使用条件によってエンジンがかかる点だ。
EV走行距離は先代プリウスPHVの場合26.4kmだったが、この距離はJC08モードでの測定であり実走行ではさらに短くなることが考えられる。トヨタ自動車は26.4kmでは短いと判断し、容量を倍増した駆動用バッテリーを採用してEV走行の距離を拡大した。総電力量2倍、重さ1.5倍のリチウムイオン電池を搭載することで、EV走行距離を「1日の走行距離をカバーできる」(豊島氏)という60km以上(目標値)にした。
EV走行が可能な最高速度も引き上げた。先代プリウスPHVは時速100kmが上限だ。しかし、サーキットの緩やかな上り勾配でアクセルを踏み込むと時速80km程度からでもエンジンが始動するため、電気自動車らしさは味わいにくい部分がある。一方、新型プリウスPHVはアクセルを踏み込んでもなかなかエンジンがかからない印象だ。EV走行の最高速度は、トヨタ自動車のテストコースでの測定値で時速135km。先代プリウスPHVと同じサーキットを同様に走行しても、エンジンは始動しなかった。
バッテリーの容量が倍増したことにより、ジェネレーター(発電機)で駆動力をアシストするデュアルモータードライブシステムも実現した。EV走行時、通常は駆動用モーターで走行するが、動力分割機構に一方向のみに回転力を伝達するワンウェイクラッチを追加したことで、駆動用バッテリーの電力をジェネレーターにも供給して駆動力を発生させられるようになった。
EV走行での加速性能を向上させたのは「速く走らせるためではない。新型プリウスPHVは、プリウス比で車重が150kg増えたので、その重さを加速感でカバーしようと考えた。スッと加速することで、走りたいように走らせることができるようになる。意のままに走らせることができれば、安全運転にもつながる」(豊島氏)。
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