新型「プリウスPHV」は先代の反省を生かす、「なるべくエンジンを使わない」:電気自動車(2/2 ページ)
「プラグインハイブリッド車なのに、なぜすぐにエンジンがかかってしまうんだ」。2012年に発売したトヨタ自動車のプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」には、このような不満が寄せられていた。2016年冬に発売する新型プリウスPHVは、プラグインハイブリッド車が持つ電気自動車としての側面を追求し、なるべくエンジンを使わないことを目指した。
寒さに強くなるには
プラグインハイブリッド車が持つ電気自動車らしい側面は、寒さに大きく影響を受ける。例えば、リチウムイオン電池は低温下では出力が低下してしまい、充電容量が十分に残っていても、エンジンがかかってしまう。
新型プリウスPHVは、リチウムイオン電池のセルごとにヒーターを設置し、充電中にバッテリーを昇温できるようにしている。タイマーで時間を設定して充電する際に、目標時刻に一定の温度に昇温できるように自動でヒーターを作動させる。ヒーターは外部電力を使用する。これにより、冬季でも十分なEV走行を実現するという。
暖房にも“寒さ対策”を施した。外気温が−10〜0℃の環境でもエンジンを始動せずに暖房を作動できるようガスインジェクション機能を搭載したヒートポンプオートエアコンを採用している。ガスインジェクション機能付きのオートエアコンは世界初だという。従来は、ガスインジェクションを含めるとエアコンの制御が複雑化するため、ガスインジェクションはマニュアルエアコンしか製品化されていなかった。
ヒートポンプエアコンは、日産自動車の電気自動車「リーフ」を始め、エンジンの廃熱を再利用できない電動車で採用されている。電気ヒーターを使用する従来のエアコンに対し、ヒートポンプエアコンは冷媒と外気の温度差を利用して室内を暖めるため、使用電力以上の暖房効果が得られる。
ただ、ヒートポンプエアコンは氷点下では暖房能力が低下するという弱点がある。これに対し、気体と液体が混合した状態の冷媒から気体を分離させるガスインジェクションを設置して、−10℃まではエンジンをかけずに十分な暖房効果が得られるようにした。
ガスインジェクションは0℃以下の時に作動する。冷媒から気体を分離してコンプレッサーに注入、冷媒の液量を増やすことで暖房能力を高める。
先代のプリウスPHVもリースの試験車両でのみヒートポンプエアコンを搭載していたが、ヒートポンプシステムの価格や構成部品の大きさ、「熱源になるエンジンがあるならエンジンを使おうという発想」(トヨタ自動車 Mid-size Vehicle Company MS 製品企画 ZF 主査の金子將一氏)から、量産モデルでの採用には至らなかった。
電気自動車でもなく、ハイブリッド車でもなく、プラグインハイブリッド車
新型プリウスPHVは、EV走行の性能向上や冬季の低温対策により、なるべくエンジンを使わない“電気自動車らしい側面”を強化してきた。
電気自動車とプリウスPHVの違いは「ファーストカーになれるかどうか。街乗りは電気自動車で十分だが、遠出するには電欠の心配がつきまとう。クルマを2台以上保有できる人には、電気自動車でよいかもしれない。エコカーの普及を第一に考え、ファーストカーとして所有してもらうことを想定すると、街乗りもロングドライブもできるプラグインハイブリッド車を提案していきたい」(金子氏)と説明する。
また、プリウスとプリウスPHVは、価格差の割に違いが分かりにくいといわれてきた。「これまでは、似たクルマならプリウスPHVよりも買いやすいプリウスがいいと思う人が少なくなかっただろう。新型プリウスPHVは、あのクルマがいいと選んでもらうことを目指して開発した。プリウスとプリウスPHVの両方の販売を伸ばしていけるのではないか」(豊島氏)。
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