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国際標準となったCHAdeMOのジレンマ、高出力化とコストの兼ね合い和田憲一郎の電動化新時代!(23)(1/3 ページ)

急速充電の規格として国際標準となったCHAdeMO規格が、ここにきて大幅に使用電流値を上げるなど仕様のバージョンアップを考えているようだ。なぜ、この段階で仕様の大幅に変更するのか。その背景や他規格との連携、課題などについてCHAdeMO協議会関係者からヒアリングを行った。

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 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)のDC充電方式は、2014年4月開催のIEC(国際電気標準会議)でCHAdeMO規格が他方式とともに国際標準として承認され、世界各地で実用化が進んでいる。最新の情報によれば、グローバルで1万3614基(日本6945基、欧州4051基、北米2097基、その他521基)が設置され、世界で最も充電ポイントの多い急速充電規格となっている。

 そのような中、CHAdeMO規格はここにきて大幅に使用電流値を上げるなど仕様のバージョンアップを考えているとのこと。なぜ、普及が進んだ段階で仕様変更を行うのか、その背景や他の規格との連携、課題などをCHAdeMO協議会関係者からヒアリングを行った。取材に応じていただいたのは、CHAdeMO協議会 事務局長の吉田誠氏と事務局メンバーの丸田理氏である。

なぜ、CHAdeMO仕様を大幅に見直すのか

2017年2月発表の「プリウスPHV」の充電コネクター。普通充電と急速充電、2つのコネクターを備えている
2017年2月発表の「プリウスPHV」の充電コネクター。普通充電と急速充電、2つのコネクターを備えている(クリックして拡大)

和田憲一郎氏 まずお聞きしたいのは、なぜ使用電流値など主要なCHAdeMO仕様を大幅に見直すのか。かなり唐突感があるが、その背景や狙いについてお伺いしたい。

吉田氏 これまでCHAdeMO仕様の出力(最大50kW)はコストのバランスを考慮して設定してきた。つまり、50kW以上に出力が上がるとコストが大幅上昇し、出力が50kWよりもかなり小さくなると充電性能が低下することから、そのバランスに配慮してきた。この結果、当該仕様を受け入れていただけて、グローバルで1万3000基以上のCHAdeMO急速充電器が設置された。

 しかし、近年、BMWやVolkswagenなどの欧州自動車メーカー、また日産自動車など国内自動車メーカーも走行距離の長いEVの量産を計画している。

そのため搭載する電池の容量もこれまでのEV(例:日産自動車の「リーフ」で最大30kWh)と比べ、60〜80kWhなどと格段に大きくなっている。従って、これらのEVに短時間で急速充電するために、現在の使用電圧、電流値(500V、125A)に比べて、仕様を大幅に引き上げたいとの要望が出てきた。

 このような欧州勢の動きだけでなく、IEC(国際電気標準会議)での協議の状況も踏まえ、まずは電流値を400Aとするよう合意した。このため、CHAdeMO仕様は、これまでの500V、125A(最大出力50kW)から500V、400A(最大出力150kW級)まで拡大を行う。

和田氏 CHAdeMO規格はIECで既に国際標準となっている。この仕様変更に際して、欧州のCombined Charging System(コンボ、CCSとも。以下、CCS)や中国基準であるGBと連携はあるのか。

吉田氏 使用電流値をどうするかは最も影響が大きいことから、CCSとCHAdeMOが400Aを使用することで一致を得ている。CCSは最大電圧を800V〜1000Vとするなど、さらに上を狙っているようであるが、CHAdeMOとしてはそこまでの仕様拡張を現段階で行う訳ではない。

 中国では、これまで日本の経済産業省と中国の国家発展改革委員会の提案により、日本自動車研究所(JARI)と中国自動車技術研究センター(CATARC)が出力方法や互換性の面で共同研究を行ってきた。このため、今回の仕様変更についても連携を取っていく予定である。

和田氏 CHAdeMO規格は既に国際標準であるため、改訂する必要があるのではないか。

丸田氏 現在、IECでIEC61851など改訂を協議中である。ただし、この発行がないと実施できないものではなく、急速充電器は安全基準として各国の基準を満足していれば改訂の途中からでも対応可能となる。

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