国際標準となったCHAdeMOのジレンマ、高出力化とコストの兼ね合い:和田憲一郎の電動化新時代!(23)(2/3 ページ)
急速充電の規格として国際標準となったCHAdeMO規格が、ここにきて大幅に使用電流値を上げるなど仕様のバージョンアップを考えているようだ。なぜ、この段階で仕様の大幅に変更するのか。その背景や他規格との連携、課題などについてCHAdeMO協議会関係者からヒアリングを行った。
改訂時期はいつを想定しているのか
和田氏 現仕様とかなり異なることから、仕様書の見直し、車両や急速充電器の準備期間も必要と思われる。改訂時期はいつ頃を想定しているのか。
丸田氏 CHAdeMO協議会では、当該案件についてメンバー間で協議を行い、仕様書はver. 1.2としてダイナミックコントロール(リアルタイム可変操作)も付与し、2017年3月をめどに発行予定である。急速充電器メーカーはそれをベースに準備することから、製品化は2017年後半以降になるのではないか。
和田氏 今後は全ての急速充電器が500V、400A(最大出力150kW)になるのか。
吉田氏 誤解しないでいただきたいのは、CHAdeMO仕様として最大500V、400Aまで許容する仕様を決めたということである。急速充電器メーカーは150kWを製作して良いし、これまでの50kW、もしくはコンビニなどに数多く設置されている30kWや20kWでも構わない。これは海外でも同様であり、どのレベルの急速充電器を開発して設置するかは充電インフラ企業と急速充電器メーカーに委ねられている。
バージョンアップ時の課題は何か
和田氏 ここまで大容量になってくると、実現するまでにかなりの課題があると思われる。それについてはどう考えているか。
吉田氏 最初に確認しなければならないのは、既存のEVやPHEVとの互換性(Interoperability)である。仕様書上は互換性があるように規定しているが、実際にそうなっているかどうかは、現物で確認してみないと分からない。そのため、2017年3月に伊勢志摩で、現行のEVやPHEVの各モデルと暫定の150kW急速充電器を持ち込み、互換性確認試験を実施計画している。
和田氏 最大出力が150kWとなると人体への影響はどうか。50kWの急速充電器でもペースメーカー植込み患者に注意喚起するようになった経緯がある。
丸田氏 それについては、安全基準レベルは従来と同じ水準を順守するよう仕様書で定めている。最終確認が必要であるが、安全基準は同じ基準で対応予定である。
和田氏 最大出力が150kWの場合、急速充電器のコネクターやケーブルが変更となるのか。
吉田氏 充電用のコネクター形状は変更しない。これを変えると互換性が保てなくなる。コードについては、大電流を流すことからケーブル内に水管を通して循環させる水冷方式も検討している。その意味では、ケーブルの形状も異なることから、操作性なども確認する必要がある。
和田氏 設置する際の課題として、150kWであれば高圧電力となり電気主任技術者による監督が義務となるのではないか。
丸田氏 確かに50kW以上となることから、これまでの低圧電力ではなく高圧電力となる。従って、電気主任技術者の監督が義務として発生する。コンビニ等で使用するのは20〜30kWだが、高速道路や大規模駐車場ではもともと大容量の高圧電力を扱っているのでそれほど影響はないと考えられる。
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