“オール日立”の自動運転技術はレベル2の最終形態を目指す:自動運転技術 日立オートモティブ インタビュー(3/3 ページ)
日立オートモティブシステムズは2016年2月、同社として初となる自動運転車の公道試験を茨城県で実施した。その自動運転システムは、“オール日立”で開発したものだ。日立グループで取り組む自動運転システムの開発について、日立オートモティブシステムズ 技術開発本部 先行開発室 スマートADAS技術開発部 部長の内山裕樹氏に聞いた。
ステレオカメラでできることはまだ増えていく
MONOist ステレオカメラをセンシング技術の中心に据えている。方針に変化は。
内山氏 日本国内の制限速度で100m前後の前方を監視する上では、ステレオカメラが有効で、足りる部分が大きいと考えている。距離感の認識に強みがあるためだ。だが、ステレオカメラ単体でセンシングすることは考えておらず、ミリ波レーダーの開発も進めている。
センシングの信頼性を担保する点ではセンサーの二重化が必要だ。高い速度域で走行するアウトバーンでの自動運転は200〜300m先を検知することが求められるし、レベル3以降の自動運転では、システムからドライバーに運転を切り替えた後、ドライバーが緊急事態に対処する十分な時間を確保しなければならない。カメラだけではセンシングが難しい範囲になるので、ミリ波レーダーと併用する。センサーの組み方には自動車メーカーの方針があるので、サプライヤのわれわれは選択肢をそろえておく。
しかし、ステレオカメラに限界があるのではない。イメージセンサーの画素数は向上していくし、ヘッドランプの進化によって確保できる視野も広くなる。ステレオカメラができることはまだ増えていくと考えている。画像認識技術がわれわれの核となる分野であることは変わらないし、足りないものは補っていく。
MONOist ライダーに関してはどう考えている。
内山氏 自動運転用のセンサーとして技術的な可能性があると見ているが、設置場所やコストなど現実的に搭載できる可能性は見えてこない。恐らく車両で装着できる場所は限られるし、その制限によって本来の性能を発揮できるのかという疑問がある。また、今後量産によってコストが下がると聞いているが、量産車に搭載できるコストになった時に精度がどこまで維持できるのか。センサーに関しては両にらみで柔軟に検討していく。
ITと自動車を融合できる日立グループの強み
MONOist 日立オートモティブシステムズの技術を搭載した自動運転車の乗り心地はどうか。
内山氏 さすがにまだ、自分が運転する方がうまいと感じられる段階だ。しかし、乗り心地としては“とにかく動く”というレベルから公道試験までの間に成長している。われわれは乗り心地の微調整を突き詰めるつもりはないが、自動車メーカーが考えるスムーズな制御を再現できるだけのエンジニアリング技術は磨いていく。
MONOist 今後、どのように提案力を磨いていくか。
内山氏 自動運転ではシステムで納入できる提案力が必要だ。関連する部品や技術が多く、部品単位で納めていても自動車メーカーの開発は進みにくい。システムを自前で理解して提案する力を持つために、自動運転プロジェクトを推し進めている。
また、日立グループ内でITの技術力と自動車部品サプライヤとしてのノウハウを組み合わせられるのは優位性の1つであり、今後の戦略としても重要視している。グループで臨める点は、自動車メーカーに日立を選んでいただく理由にもなっている。
具体的にグループ内の協力が進んでいる。日立製作所の情報通信システム社とクラリオンの何人かが、日立オートモティブシステムズの開発拠点に常駐している。地図、セキュリティ、無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)、ビッグデータの利活用などで最大限に日立の技術を生かすために強力なタッグを組んでいる。ディープラーニングや人工知能など、日立製作所の研究所が先行して取り組んでいるものを自動車に落とし込むための調査も進めている。
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