産業へと成長するドローン、「ジャパン・ドローン2016」に見る現状と可能性(3/4 ページ)
本格的なドローンの展示会「ジャパン・ドローン」が開催された。ホビー的なガジェットではなく、新産業として離陸しようとしているドローンの現状と可能性を会場からお伝えする。
災害時の通信インフラ復旧を迅速に
災害時の復旧支援もドローンに大きく期待されている領域の1つだ。NTT東日本では、災害時のケーブル復旧にマルチヘリ(ドローン)の活用を始めている。東日本大震災をきっかけに翌2012年より研究開発が始まったもので、現在、土砂崩れや雪害による通信設備への被害状況の確認、復旧計画の立案、そして復旧作業など、さまざまな災害現場で活用されている。
現在はケーブルをドローンで運んで目的地で待つ作業員に渡し、作業員がケーブルを敷設するという方法で運用されている。ドローンは飛行距離15分以内、飛行高度150m以下。操縦は資格保有者に限り、飛行は3人1組といった運用体制も敷かれている。会場では試作機として開発が進められている、重量物を運搬できる機体も展示されていた。この試作機ではドローンによるケーブルの運搬はもちろん、敷設まで行うことを検討しているという。
ワイヤレスネットワーク研究所のブースでは、無線中継伝送システムの研究が紹介されていた。災害時など、小型中継器を搭載した無人飛行機を使って中継回線を提供しようというものだ。
無人機の飛行高度も通常のドローンよりも高い300〜900m、マルチコプターではなく2翼で上空を旋回飛行することで定位置をキープする。通信距離は20km、2時間以上の連続通信が可能。実効通信速度はおよそ450kbps。テキストメッセージ、音声、インターネット通信が可能。ただ、音声やリッチテキストは帯域を圧迫してしまうので、テキストメッセージでの運用が現実的だろうとのこと。既に携帯電話通信網との通信実証実験や、河川敷の映像伝送実証実験など行われている。
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