産業へと成長するドローン、「ジャパン・ドローン2016」に見る現状と可能性(2/4 ページ)
本格的なドローンの展示会「ジャパン・ドローン」が開催された。ホビー的なガジェットではなく、新産業として離陸しようとしているドローンの現状と可能性を会場からお伝えする。
産業展開へ向けた研究開発も盛んに
サービスが実際に運用され始めると、求められてくるのはサービスの“質”だ。
基本的に屋外で使用するドローンはGPSで位置制御を行う。しかし、工場内やトンネルなどGPS電波がうまくつかまらない(弱い)環境では独自の位置制御システムが必要になる。これはドローンを製造する各社が技術的に競っている部分の1つだ。
前述のミニサーベイヤーなど、工場など屋内向けた非GPSタイプの機体ではSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術による制御を行う。SLAMはロボットの制御にも用いられる技術で、環境マッピングと位置推定を同時に行うことで自律的に飛行する。ミニサーベイヤーでは水平・垂直方向のレーザーで3次元でのリアルタイムマッピングを行い、マップ内での自分の位置を推定し、自律飛行するという。
佐賀大学の佐藤和也教授らが進めている研究は、Webcamを使ってドローンの自律飛行を制御しようというもの。機体に2つのマーカーを取り付け、Webcamの映像でその位置を認識して操作する。専用センサー類を使わないため、ハード的なコストを抑えての非GPS制御が可能となる。また、WebCamの映像をiPadなどタブレットなどへ映し出し、操作系もそちらで扱えるようにすれば、よりドローン活用のハードルを下げることができる。
リコーは、ステレオカメラとIMUセンサー(加速度センサー、ジャイロセンサーを含む慣性計測装置)によるドローンの自動飛行の研究をブルーイノベーション、東京大学との共同開発で進めている。ブースでは、リコーがこれまで培ってきた画像センシング技術を生かした飛行システムやソリューションを展示されていた。
面白いところでは、3D開発ソフトを数多く手掛けるオートデスクが3Dアニメーション作成ソフト「Maya」を利用したドローン制御のデモを行っていた。ブースでは、Kinectを使って現実の3D空間をリアルタイムにMayaへ取り込む様子が紹介されていた。3D空間中でドローンを認識させ、飛行ルートを設定することで自動飛行させることができるし、その中でドローンの飛行を操作することも可能だという。確かに3Dの画面を見ながらの操作は直観的で、比較的容易に操作できるようになりそうだ。
富士通が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)と共同研究を進めているのが、建造物の点検に特化した二輪型マルチコプタ。ドローンというと対象物と接触しないことが大前提だが、対象物を建造物に限定することで、あえて接触型としたという。位置を固定することができ、接触している面に沿って、連続的に情報を記録することが可能となっている。製品化に向け、実証実験を重ねているという。
サービスの質を上げるため、ジェネラルな、オールマイティーな方向でドローンの機能を上げていくより、用途や使用場所を限定して最適解を追求し、そこに自社の技術を生かすという流れが起きているのが非常に興味深いところだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 屋内でドローンが安定の自動飛行、リコーらが開発
リコーは東京大学と同社、ならびブルーイノベーションと共同で、非GPS環境下でも自動飛行するドローンの飛行システムを開発した。慣性計測装置とステレオカメラを利用する。 - テラモーターズがドローン測量の新会社「計測時間を10分の1、コストを5分の1」に
電動バイクの開発販売を手掛けるテラモーターズが、産業用ドローンによる土木測量サービスを提供する新会社「テラドローン」を設立した。±5センチの高精度と「計測時間を10分の1、コストを5分の1に低減」をアピールする。 - 「自律飛行で測量」のエアロセンス、全国8エリアでサービス開始
自律飛行する産業用ドローンでの計測ならび解析を提供するエアロセンスが、全国8エリアでの法人向け営業を開始した。地形や構造物のモデル化、土量の測定などを行う。 - ドローンでメールを“束ねて”孤立した被災地へ
KDDI研究所が災害時を想定しての、ドローンを利用したメール送信の実証実験に成功した。メールを“束ねて”空輸することで、携帯電話の届かない孤立地域と非孤立地域の間を結ぶ。 - ドローン利用のインフラ監視、ブイキューブが実証実験
「V-CUBE」などビジュアルコミュニケーションを手掛けるブイキューブが、パイオニアVCと共同でドローンを活用したインフラ点検や災害対策の実証実験を開始する。