東芝メディカルの売却益5900億円、“第三者”を介して東芝が年度内計上へ:医療機器ニュース(2/2 ページ)
東芝とキヤノンは、東芝からキヤノンに東芝メディカルシステムズの株式を譲渡するための契約書を締結したと発表した。譲渡金額は約6655億円。東芝は、東芝メディカルシステムズの株式売却を、MSホールディングという“独立した第三者”を介することで、2015年度内に約5900億円の売却益を見込んでいる。
東芝メディカルシステムズをどのようなプロセスで売却するのか
一方、東芝側の発表文の内容は、東芝メディカルシステムズをどのようなプロセスで売却するかの説明にあてられている。
東芝は、「キヤノンと東芝メディカルシステムズ株式等譲渡契約書を締結しており、決済は本日(2016年3月17日)完了している。東芝メディカルシステムズは確定的に当社の子会社ではなくなるが、キヤノンが主要各国の競争法規制当局からのクリアランスを得られた時点で子会社とするため、それまでに独立した第三者であるMSホールディングスが東芝メディカルシステムズの議決権を保有する」としている。
通常の株式譲渡契約では売る側から買う側に直接株式が譲渡される。しかし、今回の株式譲渡契約では、東芝メディカルシステムズの全株式をMSホールディングという企業に譲渡してから、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの買収が各国法規に抵触しないことを確認でき次第、MSホールディングはキヤノンに株式を譲渡することになる。
MSホールディングは設立日が2016年3月8日で資本金は3万円。住友商事名誉顧問の宮原賢次氏、元東京高等裁判所長官の吉戒修一氏、元あずさ監査法人専務理事の横瀬元治氏の3人が取締役で、東芝メディカルシステムズの株式の保有と運用を目的に設立された特別株式会社である。
これは、企業のM&A手続きで最も時間がかかるといわれている各国政府の独占禁止法への対応を進めながら、東芝が東芝メディカルシステムズの売却による収益を可能な限り早急に決算に計上したいためのプロセスだ。実際に今回のキヤノンへの株式売却によって、「2015年度に売却益として認識できた場合には約5900億円(連結、税引前損益、概算)を計上する見込み」(東芝)としている。ただし、「会計処理は現在慎重に検討している」(同社)ともしている。
富士フイルムの質問状に対する回答になるのか
東芝とキヤノン両社の発表は2016年3月17日の15時に行われた。この日時は、富士フイルムが東芝宛に送付したと報道されている、東芝メディカルシステムズ株式売却についての質問状の回答期限になっている。
富士フイルムが質問状の中で指摘しているのが、2016年3月末までに売却益の計上が可能かどうかだ。日本の独占禁止法では、大企業間での株式譲渡は届出の受理から30日間経過するまで完了させられない。東芝がキヤノンに独占交渉権を付与したのが3月9日である以上、東芝メディカルシステムズの株式売却が2016年3月末までに完了するはずがない。すなわち、その売却益を東芝が2015年度決算に計上できるはずがないというわけだ。
今回の東芝の東芝メディカルシステムズ株式売却の発表文は、富士フイルムへの回答として作成されているようにも読める。とはいえ、キヤノンの入札金額を上げるための当て馬にされた観のある富士フイルムにとっては憤懣やるかたない回答といっていいだろう。
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