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NDAにおける二大義務の1つ「秘密保持義務」とは何か?いまさら聞けないNDAの結び方(6)(4/4 ページ)

オープンイノベーションやコラボレーションなどが広がる中、中小製造業でも必要になる機会が多いNDAについて解説する本連載。今回は前回に続き、中堅・中小企業がNDAを結ぶに当たり留意すべき点を説明します。

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第4条のチェック

 第4条は「CFGモーターズ又は大江戸モーターは、相手の秘密情報を社内で必要なメンバーに開示してもいいよ」という規定です。NDAの契約は大江戸モーターとCFGモーターズという会社(法人)同士とせざるを得ませんが(秘密情報の開示を受ける全ての役員、従業員全員で契約するのは煩雑ですし、法的責任の所在も曖昧になるかと思います)、実際に秘密情報を扱うのは、社内の役員又は従業員となります。このため、第4条のような規定は、NDAのひな型に含まれているのが通常です。

 ただ、同条には「この場合甲及び乙は、当該役員又は従業員に対して本契約により自己が負う義務と同等の義務を順守させるものとし、かつ、当該役員又は従業員の行為について全責任を負う」とも記載され、開示の際には、CFGモーターズ又は大江戸モーターが、開示を受ける従業員などに秘密保持などの義務を負わせると共に「万が一情報漏えいがあった場合はその責任を負う」とされています。

 そのため、江戸氏としては、第3条でも確認した通り、CFGモーターズから開示された秘密情報に触れる自社の技術スタッフに対し、CFGモーターズの秘密情報の社内での厳格な管理を指示するとともに、外部に漏えいをしないよう十分に注意を払うよう指示する必要があると考えます。

 従業員は、労働契約があるうちは会社の営業上の秘密を保持すべき義務があると考えられるものの、今回扱う情報はCFGモーターズという「他社の」秘密情報なので、場合によっては秘密情報の開示を受ける従業員に別途秘密保持などの誓約書を会社に提出してもらうことも考えられます。しかし、江戸氏は、小型モーターを開発した自社の技術スタッフを信頼して口頭で注意を促すだけとし、誓約書の提出まではさせないと決断しました。

その他

 秘密情報を第三者に開示できる例外として、第3条、第4条で紹介したもの以外に、以下のような条項もあります。

法律、政令またはその他の法令により、裁判所、政府機関、又は地方公共団体などに秘密情報を開示する必要が生じた場合には、甲および乙は、直ちに相手方に対してその旨を書面にて通知し、その開示内容について確認を得るものとする。

 この条項は、例えば、民事訴訟法等の規定により裁判所などに情報開示をしなければならないような場合を規定しているのですが、NDAの一般的・共通的な条項ですので、詳細は市販されている書籍に譲りたいと思います。

 今回はこの程度としましょう。次回(最終回)は、秘密情報の目的外使用禁止義務について説明したいと思います。

筆者プロフィル

柳下彰彦(やぎした あきひこ)

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 化学メーカーにて、電子デバイスの商品開発および研究開発に従事後弁理士資格を取得し、同社知的財産部にて、国内外の出願関連業務、国内外の渉外業務などに従事。その後、弁理士として独立し、国内外の出願関連業務、国内特許の鑑定などを行う。

 慶應義塾大学理工学部計測工学科卒業。慶應義塾大学大学院理工学研究科物質科学専攻修士課程修了。桐蔭法科大学院法務研究科修了。2011年より弁護士法人内田・鮫島法律事務所に入所し、現在に至る。

 2000年に弁理士試験合格、2009年に司法試験合格、2010年弁護士登録、2013年弁理士再登録。


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