第4次産業革命って結局何なの?:いまさら聞けない第4次産業革命(1)(3/3 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起こることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第1回目はそもそもの「第4次産業革命とは何か」を紹介します。
IoTにより製造業は何が変わるのか
「IoTによって変わる」ということはよくいわれていますが、実際にはどういうことが変わるのでしょうか。
IoTによって変わるといわれてもまだピンときません
確かにパッと言われてすぐに理解できるものではないわね。IoTは文字通り、モノがネットワークでつながって情報のやりとりが行えるようになるということね。諸説あるけど、IoTには4つのフェーズがあるといわれているわ
IoTはその言葉の通り、モノのインターネットです。従来は人が情報の授受の対象だったのが、モノがそれを行うようになるということです。
IoTには4つのフェーズがあるといわれています。1つが「見える化」です。モノが情報の授受を行うことで、そのモノがどういう状況にあるかやモノのある環境の情報が分かることになります。2つ目が「制御」です。モノがどういう状況であるか、ということが分かれば、その情報を元に「ある数値を超えればスイッチを切る」ような自動制御などを行えるようになります。3つ目がこれらの可視化情報と制御を組み合わせた「最適化」です。可視化された情報をクラウド環境などに集めて、ビッグデータ解析技術などを通じて、最適な結果を求め、それを「制御」を活用して最適な形に現実世界にフィードバックすることができます。そして4つ目が「自律化」です。これらの3つの技術を組み合わせて「現場のモノ」が自動でこれらのサイクルを繰り返すことで人手を加えなくても自律的に最適な判断をし、行動することができるようになります(関連記事)。
第4次産業革命は現在進行形
IoTによる第4次産業革命は、これらの4つのフェーズをそれぞれ実現することで、産業構造を変革しようというものになります。
その説明を聞いてもまだイメージがわきませんね。どういう事例があるんですか?
確かにそれ、日本の製造業の人がよくいうわよね。最終的な理想像は示されているけど、なかなか現実的なビジネスの形として見えていないのがIoTの課題の1つだともいえるわね。でも、あまり難しく考える必要はないと思うわ。まずは自分の身近なところで考えてみることね
印出氏はさらに付け加えます。
1つ重要なことは、第4次産業革命は現在進行形であるということ。日本の人と話しているとよく成功事例とか、すぐに『模範解答』をもらいたがるけど、世界のどこに行ったとしても、その模範解答は誰も持っていないわ。それぞれ自分たちが試行錯誤した成果を積み上げて、模範解答に近づこうとしているところなんだもの。グーチョキパーツもまずこのIoTの4つのフェーズで効率化や新たなビジネス構築ができそうなところを考えてみるのが大事なんじゃない?
印出氏は「第4次産業革命は現在進行形」と述べています。確かに、ドイツのインダストリー4.0や米国のインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)など、さまざまな政府や団体がIoTを活用した新たなビジネスモデル構築などに取り組んでいますが、どちらも重視しているのが実証の場である「テストケース(テストベッド)」です。つまり、成功の形が確約されているわけでなく、とにかくいろいろ試して形になりそうなものを形にしていきましょうというのが現段階だといえます。
日本の製造業の人と話をしているとすぐに「どういう形が正解か」という一足飛びの答えを求める傾向がありますが、実は誰もが認める正解例はありません。だからこそチャンスがあるといえるのです。トライ&エラーを繰り返し、早く正解例を見つけ出すことができれば、第4次産業革命時代の勝ち組になれるのかもしれません。
次回は、IoTおよび第4次産業革命の1つのきっかけになったドイツのインダストリー4.0の動きについて取り上げます。
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