日産自動車は10年前から予見していた、電気自動車と自動運転車のトレンド:SEMICON Japan 2015 講演レポート(3/3 ページ)
日産自動車 フェローの久村春芳氏が、半導体製造技術の国際展示会「SEMICON Japan 2015」で講演。同社は、COP21の合意により需要の拡大が見込まれる電気自動車や、自動車業界の内外で開発が加速する自動運転車のトレンドについて、2005年の時点で予見していたという。
マイコン、交通システムの面からも自動運転社会に向けた動きを加速
同講演では、車載システム向けのマイコンやSoC(System on Chip)を開発するルネサス エレクトロニクス 執行役員常務の大村隆司氏も登壇した。大村氏によれば、同社の車載マイコンの出荷数は2014年時点で累計8億9000万個としており、世界シェア4割を占めている。一方、カーナビゲーションシステムをはじめとする車載SoCについては、同じく1億4000万個を累計で出荷しており、世界シェア7割に達するという。
こうした需給規模を背景に幅広いユーザーニーズの理解を進めていくとしている同社は、ハイブリッド車や電気自動車をはじめとするエコカー、低燃費エンジンについても「半導体の役割は大きい」と見て、現在30〜40%程度とされているガソリンエンジンの熱効率向上に向け、より高性能なマイコン、アナログチップの開発を行っている。
またハイブリッド/電気自動車に対しては、モーター周辺機器の高度な温度制御を低容積のECUモジュールで実現する技術や、OTA(Over the Air:無線通信によるソフトウェアアップデート)、大容量フラッシュメモリ内蔵マイコン、多重化されたセキュリティ保護、交通事故を防ぐための安全制御技術、センシング技術にも注力している。
このうち安全制御技術については、同社が「世界最先端のセーフティマイコン」と銘打つ「RH850/P1x-C」がその役割を果たすとした。CPUコアは異常発生時の冗長性をもたせたデュアルロックステップ方式を採用しているほか、自動車向け機能安全規格であるISO 262626で最も安全要求レベルが厳しいASIL-Dへの適合、欧州のプロジェクトEVITA仕様の車載セキュリティ、入出力インタフェースはCAN×4チャネル、イーサネット×2チャネル、FlexRay×4チャネルを含む計20チャネルをサポートし、チップ自体は150℃の高熱環境保証、20年間の動作保証を行うというものになっている。
自動運転技術や運転支援システムに向けては、同社独自のソリューションとして物体検知を受け持つ「R-Detect」や「R-Vision」、車両制御を行う「R-Drive」、各種通信技術に対応する「R-Connect」などにより、全方位から推進する計画。それぞれで用いることになるマイコン、SoCを順次製品化して、自動運転などにキャッチアップしていきたいとした。
日本IBM 執行役員 成長戦略 インダストリー・ソリューション兼スマーターシティ事業担当の鶴田規久氏は、現在取り組んでいるオランダ・アイントホーフェン市の幹線道路を中心とした実証実験の内容を解説した。同氏によれば、小型の専用モジュールを200台のタクシーや一般車両に取り付け、車両データとGPSデータを収集し、同社が管理する「Smart Traffic Management Center」と呼ばれるサーバシステムで情報を集約しているという。
これにより、渋滞を回避する高度なリアルタイムナビゲーションの実現可能性に加え、危険な路面の検知とドライバーへの事前通知、自動車の操作などから判断した渋滞地点の特定、天候や路面状況の把握、さらには将来的な渋滞解消、トラフィックの最適化などが期待できるとし、交通の流れを加速させ、事故対応の迅速化などにもつながるとした。
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