日産自動車は10年前から予見していた、電気自動車と自動運転車のトレンド:SEMICON Japan 2015 講演レポート(2/3 ページ)
日産自動車 フェローの久村春芳氏が、半導体製造技術の国際展示会「SEMICON Japan 2015」で講演。同社は、COP21の合意により需要の拡大が見込まれる電気自動車や、自動車業界の内外で開発が加速する自動運転車のトレンドについて、2005年の時点で予見していたという。
会場の東京ビッグサイト周辺で自動運転を実証実験中
一方の自動運転はどうか。同氏は、既に自動運転の実証実験を今回のセミナー会場となった東京ビッグサイトの周辺約17kmの公道上で行っていることを紹介し、あらかじめ決めたルート上での直線走行、車線変更、分岐、合流、歩行者などがいる交差点の左折といったシチュエーションを自動運転によって走行している様子を映像で紹介した。特に最後の交差点については、目の前を横切る二輪車や、横断歩道を渡る歩行者を検知し、停止してそれらをやり過ごす判断だけでなく、立ち止まって交通整理をしている人の認識まで正しく行っていた。
また、別途海外で行った自動運転の実験では、駐車場における他車両の回避判断も含めた自動駐車、スマートキーのボタンで呼び出すことによる駐車場所からユーザーの目の前までの自動運転、直線道路での追い抜き、道路上で停車している車両の追い越し、飛び出してきた人の回避、赤信号を認識しての停車、信号のない交差点への侵入などに成功している。
このような自動運転では、人や障害物を検知するための「センシング」、カメラ映像で検知した物体が具体的にどういったものであるかという「認知」、認知したものに対してどうすべきかを決める「判断」、その判断をもとに行う適切な「操作」という4つが大きな要素であると久村氏は述べる。
同社ではこのうちセンシングについて、カメラ、レーザースキャナー、レーダーなど最小限のセンサーを用い、コストにも配慮しながら設計を進めている。ある程度実現性に「目処をつけている段階」(同氏)だという。その他には、動いている車両や停車中のタクシー/バス、歩行者、交通標識のリアルタイム認識処理を行うプログラムを開発中で、歩行者そのものの認識だけでなく、歩行者1人1人の歩いている方向を検出する仕組みについても研究を進めている。
また、フェンス越しに見える車両の認識や、車両の進行方向と並行に移動する歩行者に対する判断、近距離の車車間通信によって最適な車間距離を取る、魚の動きにヒントを得た「魚群運転」などについても議論や研究が行われている。さらには、速度と車間距離を自動制御する仕組みをもつ自動車が全体の20%程度を占めるだけで、慢性的な自然渋滞が発生していたポイントでも渋滞を解消できることを示す実験イメージも紹介した。
以上のような研究を進めている日産自動車は、2016年に渋滞路および1車線内での自動運転を、2018年に高速道路および複数車線での自動運転を、そして2020年には交差点の通過を含めた市街地における自動運転を実現していくとしている。市街地走行については、ハードウェア/ソフトウェア両面で技術的な課題がまだ多いとしながらも、「大まかに3年ごととされる自動車のモデルチェンジサイクルにうまく合わせ、使命感をもって技術開発していく」と宣言。こうした自動運転には多数の電子制御部品が必要になることから、会場に詰めかけたエレクトロニクス業界関係者に対し協力を呼びかけた。
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