新型「スカイライン」が示唆する日産の自動運転技術の実現性:安全システム(1/2 ページ)
日産自動車は、スポーツセダン「スカイライン」をフルモデルチェンジし、2014年2月から国内販売を始める。新型スカイラインが世界初採用をうたう3つの技術は、同社が2020年までに複数車種で導入すると言明している自動運転技術との関連が深い。
日産自動車は2013年11月11日、スポーツセダン「スカイライン」をフルモデルチェンジし、2014年2月から国内販売を始めると発表した。「V37モデル」に当たる新型スカイラインは、高級車「フーガ」や「シーマ」と同じ1モーター2クラッチ方式のFRハイブリッドシステムを搭載し、JC08モード燃費を18.4km/l(リットル)に高めた。価格は、最も安価な2WDモデルの「350GT HYBRIDグレード」の449万6100円から、最も高価な4WDモデルの「350GT FOUR HYBRID Type SP」の553万7000円となっている。月間販売目標台数は200台。
近年のスカイラインは、北米市場において、高級車ブランド「インフィニティ」の車両として展開されてきた。2013年8月には、新たなネーミング戦略のもとフルモデルチェンジを行い、「インフィニティQ50」として販売を開始している。国内で販売する新型スカイラインは、この「インフィニティQ50」のハイブリッドモデルを販売することになる。またエンブレムも、インフィニティのものを使用する。従来、国内販売のスカイラインについては、日産エンブレムを使用していた。
なお、ハイブリッドシステムを搭載しないモデルについては、従来の「V36モデル」の販売を継続することで対応する方針だ。
ステアバイワイヤを世界初採用
新型スカイラインは、シリーズ初のハイブリッド化の他にも、注目すべきさまざまな技術を採用している。今後の日産自動車の方向性を占うものばかりだ。
中でも、世界初採用をうたう技術が3つある。「ダイレクトアダプティブステアリング」と「アクティブレーンコントロール」、「前方衝突予測警報(PFCW)」である。これらは、同社が2020年までに複数車種で導入すると言明している自動運転技術との関連が深い。
まず、ダイレクトアダプティブステアリングでは、ステアリングの動きを電気信号によって前輪の車軸に伝達するステアリング(ステア)バイワイヤ(Steering by Wire)を世界で初めて採用した。現行のほとんどの車両に搭載されている電動パワーステアリングを含めた機械式ステアリングは、ドライバーのステアリングホイール操作によって発生する回転力をステアリングシャフトを介して前輪の車軸に伝達している。一方、ステアバイワイヤでは、ステアリングホイールの回転量や回転力などをセンサーで検知し、それらのセンサー情報を基に算出した電気信号を、ワイヤーハーネスを介して、タイヤの切れ角を制御するモーターに伝達する。
機械式ステアリングに替えてステアバイワイヤを採用することで、「応答遅れのないシャープなハンドリング、路面不整によるステアリング取られ、進路乱れのない安心感など、快適な操作フィーリングが得られる」(同社)という。
なお、ステアバイワイヤでは、電気信号の伝達に何らかの不具合が発生した場合に、全くステアリング操作を行えなくなるという課題がある。ダイレクトアダプティブステアリングでは、この課題について2つの手法で対策を施している。1つは、ダイレクトアダプティブステアリングの制御に3個のECU(電子制御ユニット)を用いて、互いの動作に故障や異常が発生していないか常時監視し合うというものだ。もう1つは、電力供給の不具合などにより、3個のECUが全て動作しなくなるような状況への対策で、ステアリングホイールと前輪の車軸を機械的に接続するステアリングシャフトを設置してある。万が一の際には、通常はステアリングホイールとステアリングシャフトを切り離しているクラッチを切り替えて機械的な接続を確保し、最低限のステアリング操作を行える。
ステアバイワイヤは、機械式ステアリングよりも高い応答性が特徴である。自動運転技術を導入する上で、センサーなどで得た情報から周辺の状況を判断して運転操作を行う際に、ステアリング操作の応答性が高ければ高いほど、自動運転の余裕度を高めることができる。
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