日立が描く第4次産業革命とは?:SCF2015 基調講演(4/4 ページ)
製造現場にITの波が押し寄せる中、総合電機としてさまざまな事業領域で製造現場と関わる他、自らも製造業としての製造現場を抱える日立製作所はどのように捉えているのだろうか。
イノベーション創出に貢献するデータドリブン
イノベーションの創出に向けては、つながることでイノベーションが生まれ、全体最適、社会全体の共生へと進むことが求められる。現場の本質的な課題を把握して(利用者ニーズを探る)オープンなデータ連係環境(集めたデータを自在に取り扱う)人口知能(AI、データを分析し仮説を提示)などが必要となり、セキュアな環境でデータをナレッジまで高めて、価値創出を支援している。業務現場を観察し、利用者の潜在ニーズや本質的課題を明確化し、共有、ソリューションへつなげることが必要となる。
また、新たなサービスのためのアプリケーションを自在に生み出せる環境を実現させるため、日立では共生自立分散プラットフォームの構築を進めている。この中には利用者とデータを共有することでオープンな実行・開発環境を得ることができる。
ソフトウェアでは日立の子会社、日立データシステムズ社が2015年5月に買収したPentaho社が提供するソフトウェア「ペンタホ」を用いたビッグデータ利活用のシステム導入サービスを10月から販売開始した。ビッグデータ利活用の最適な手法を導き出すための技術支援を行う「データ利活用トライアルサービス」とペンタホをインストールしたシステム検証環境をクラウドで利用できる「データ利活用検証支援サービス」を提供している。ビッグデータ利活用における手法の試行・検証や検証結果の可視化・評価に関する技術支援を、それらを実行するための検証環境を合わせて提供することで、事前検証に伴うユーザーの初期投資や作業コスト・負担を軽減する。
人工知能(AI)では、Hitachi AI Technologyの開発を進めている。ここでは全体目標(KPI)に対する実績推移と現場データ変化の相関を自動分析し、人間が発見困難なKPI向上仮説を提示することを目指している。具体的には入力データを用い複合指標自動生成して、その中にある相関指標を抽出しながら、確信度の高いKPI向上仮説を提示していく。
センサー技術、AIの発達は人間の行動分析や新たな価値発見を可能にする。例えば流通業では店員ホットスポットの発見により顧客単価が15%向上したり、コールセンターでは生産性を上げる休憩法の発見により13%の受注率向上につながったりした例がある。
セキュリティについてはさまざまなシステムが連携する中で、日立ではサイバー・フィジカル連係した多重多層のセキュリティを推進している。攻撃者がもつ攻撃スキルに対抗できる多層防衛力が必要で、攻撃スキルレベルに応じた防衛策を3軸で実現し生産ライン、製品、会社を守る仕組みを構築している。
今後の展望としては「これからのモノづくりの革新の先にあるのは、より幅広い企業や、業種、産官学、国や地域の枠や壁を乗り越えたアプローチが必要となる。メガトレンドを生み出す、相互に複雑化して相互に関連しあう社会課題に対してイノベーションで解決するには1社では難しい。そのためオープンイノベーションとして皆さんと一緒に課題解決に取り組んでいきたい」(齊藤氏)と講演の参加者に呼び掛けた。
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