“傲慢な”フォルクスワーゲンは排ガス不正を機に開かれた企業になれるのか:VW排気ガス不正問題(2/2 ページ)
2015年9月の発覚から2カ月。フォルクスワーゲンの排気ガス不正問題は収束する気配を見せていない。この問題について、第三者認証機関のDNV GLグループで法務担当ディレクターを務めるThor Winther氏が講演で言及。同氏は「傲慢な企業といわれたフォルクスワーゲンだが、今後は開かれた企業になる必要がある」と述べた。
メキシコ湾原油流出事故との比較
そしてWinther氏は、メキシコ湾原油流出事故とVWディーゼルゲートの比較も行った。
2010年のメキシコ湾原油流出事故は、BPなどが出資する石油掘削施設ディープウォーターホライズンが爆発炎上した事故だ。死者・行方不明者は11人、施設は水没し、500万バレルもの原油が流出した。被害総額は火災事故そのもので187億米ドル、原油流出などの損害訴訟で440億米ドル、合計538億米ドル(約6兆6000億円)に達した。現在は、事故発生から5年経過したこともあって訴訟はほぼ終結しており、今後この被害総額が大幅に増えることはなさそうだ。
それではVWディーゼルゲートの被害総額はどこまで膨らむ可能性があるのか。現時点でVWは、当初のディーゼルエンジンのNOx排出量不正で65億ユーロ、後に発覚したCO2排出量不正で20億ユーロの損失を想定している。
しかし、クレディ・スイスの予測によれば、排気ガス問題の解決、所有者への補償、民事訴訟・刑事訴訟の対策費などにより、最悪なシナリオでは780億ユーロ(約10兆円)の損失が出るという。また最善のシナリオであっても230億ユーロ(約3兆円)の損失が出るとしている。「問題の発覚前の株価は約160ユーロだったが、現在は120ユーロ前後まで下落しており、時価総額に換算すると300億ユーロ近い棄損になる。さらには長期的影響として自動車の販売台数の減少も免れられない。2015年10月のグループ販売台数は前年同月比で5.3%減となっており、今後もこの傾向はしばらく続くだろう」(Winther氏)。
実はソフトウェアによる排気ガス不正はVWディーゼルゲートが初めてではない。1996年にFord Motor(フォード)が「Econoline」で行った排気ガス不正では、6万台が対象になり、750万米ドル(約9億円)の罰金が科せられた。そして1998年には、商用車メーカー7社が行ったディーゼルエンジンの排気ガス不正により、罰金は8000万米ドル(約98億円)に達した。さらに、対象となった130万台の回収費用は総計10億米ドル(約1230億円)に上ったという。
だが今回のVWディーゼルゲートは、当時最大規模とされた商用車メーカー7社のディーゼルエンジンの排気ガス不正をはるかに上回るものになっている。
Winther氏は、「これからVWを待つ道のりは厳しい。排気ガス不正によって得られたであろうメリットよりもはるかに大きい代償を支払うことになるだろう。生き残っていくには、今回の排気ガス不正に対する経営陣の関与なども含めて開示していくことが必要だ」と語る。加えて、「今回の問題は、VWという企業の文化によるところが大きいと感じている。これまでVWは、傲慢で自己満足的な企業といわれることも多かった。今後はこれを変えて、開かれた透明性のある企業になる必要がある」とも述べている。
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